人材の確保・育成

坂本光司先生が説く、人財育成の確保・育成について、「人を大切にする経営学講義」より抜粋抽出します。

 企業経営にとって重要な人財とは、高度な専門知識を保有しているのはもとより、利益意識・コスト意識が高く、市場や社内外の人々を動かす企画・演出ができる、誠実かつ心優しい社員である。もっとはっきり言えば、新しい価値の創造ができる、正義感の強い社員でもある。こうした人財を継続的に確保していくためには、準備と努力が必要である。そのポイントは、次の3つである。

 第1は、好・不況でブレない採用である。

 第2は、新規学卒中心の採用である。

 第3は、老若男女・学歴・国籍を問わない採用である。

 次に育成について述べると、いい企業の人材の育成に対する考え方・進め方は、景気期待型企業や好・不況に大きくブレる企業のそれとは大きく異なる。それは、たんに教育・訓練に熱心というのではなく、経営理念に基づく人財育成方針を策定し、期待される人財像や個々人の役割を明確に示している点である。そして場当たり的ではない、計画的・戦略的な人財育成システムを総合的に確立しているのである。まさにすべての社員が、より優れた価値ある人財になれるような、ハード・ソフトの仕組みや社風が存在するのである。

 例えば先輩の言動、背中によるOJT教育、さらには業務知識だけではなく、人間力そのものを高めるOFFJT教育や自己啓発支援プログラムを充実させている、といった具合である。加えて言えば、金太郎飴的な教育ではなく、社員一人一人に合った個性尊重型の教育を行っているのである。

 また、企業のあるべき教育時期は、所定労働時間の5%以上が望ましいと思われる。つまり毎月、ほぼ1日分の教育である。筆者のこれまでの調査では、これが10%を超す企業も少なからず存在する。企業の成長は社員一人一人の成長の総和であり、社員の成長なくして企業の成長はあり得ないからである。

 もう一つ、人材の確保・育成で重要かつ大切なことは、確保し、育てた人財の転職的離職をなくすことである。近年の傾向では、入社して3年以内に、中学校卒は7割、高校卒は5割、大学卒は3割が転職すると言われる。いわゆる「七五三現象」である。せっかく確保した人財が次々とこぼれ落ちていくような「ザル的人財経営」では、安定的にその成果を高めることは到底できない。

 最たる対策は、その企業に所属することの喜びを、かみしめられるような経営をすることである。

(人を大切にする経営学会 本田佳世子)

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