完璧の呪縛
日経ビジネスデジタル版に、デジタル監の石倉洋子さんの記事「『完璧の呪縛』から逃れる処世術」という記事が出ています。
「完璧の呪縛」とは、100パーセントできるようにならないうちは何も出来ない(したくない)ことの呪縛を示しています。これは「正しい答え症候群」と同じで、どこかに唯一の正しい答え、完璧なやり方があるのではないか、という発想と同じであると説いています。このように完璧を目指していると、時代に乗り遅れ、何も出来ないということです。
このような話は経営において、最近よく聞く話です。事業の展開に正解なんかない、それを「完璧」にしようと思っていたら、何もできないまま時が過ぎて言ってしまって、時代に取り残されてしまいます。
ここで悩ましいのは、私どものような士業の在り方です。私どもの仕事は、できるだけ「完璧」な解を求め、その上で実社会と法律との間のギャップをどのように埋めることが出来るかと発想します。お客様からの問い合わせに対して、文献を確認し、裁判例を確認し、行政から発信されている情報を確認し、その上で、「正解」を見つけた上で、その「正解」と現実とのギャップをどう埋めるのか、どの程度のリスクがあるのかを分析し、それをお客様に提案していくことになります。
このような思考方法をもつ私どもにとって、「完璧」を目指すことなく、変化を認めて、まず行動し、行動した後に修正していくという発想は、理屈では分かっていても、なかなか踏み出せない発想になります。裁判所、行政、士業等が時代に遅れてくるのは、このような発想の違いもあるように思うのです。
となると、変化を認めて、まず行動し、行動した後に修正していく事業に、私どもがサポーターとして関わる場合の思考が重要となります。ここで、「完璧」のみが正解となり、それ以外を認めないということであれば、到底、経営者のサポーターとなることはできません。リスクを検討しながら、どうやったら、できるだけリスクを避けられるのかを経営者と共に考えていく、つまり、経営者と同じように、行動しながら修正していく発想が必要となります。
相反する思考方法を上手く両立できるかどうかはとても難しい課題です。未だ学び中です。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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