謝罪、お詫び、そして遺憾
何か問題が生じてしまった場合、記者会見、株主総会、お客様対応等でどのようなスタンスに立つか、言葉の使い方が問題となることが多くあります。この点、法律では特にどの言葉がどの意味を持つかということが明確になっているわけではありません。しかし私たちがアドバイスをする場合には、この3つの言葉の使い分けをしています。
遺憾とは、国語辞典によれば、期待したようにならず、心残りである、残念である等という意味となります。よく国会議員等が使っている印象があります。
「責任を果たせなかったことは遺憾にたえない。」などと使ったりしますが、基本的に、本人は「残念に思っている」というに過ぎず、全く自分に責任があるとか、自分が悪いとは思っていないときに使われたりします。ですから、自分にも何らかの責任がある場合には、「遺憾」という言葉は使わない方がいい、ということになります。経営者には、社員に対して監督責任があるので、事業に関して社員が何らかの問題を起こした場合、経営者は、「社員の行ったことについて、大変遺憾に思います。」などと回答すると、無責任だとの批判を受ける可能性が極めて高くなります。
難しいのは、お詫びと謝罪です。お詫びを辞書で引くと、謝罪すること。謝ること等と書かれていたりします。しかし実際に使われる場合、「このようなことが生じてしまったことにつき、お詫び申し上げます。」というのと、「このようなことが生じてしまったことにつき、謝罪致します。」というのではニュアンスが異なります。
この違いについては、先に謝罪について考えた方がよいかもしれません。謝罪とは、自らの過ちにより、相手に対して損害(迷惑も含む)を与えてしまった場合に、その過ちを謝ることを意味します。そして謝罪する場合、自分の何が悪かったのかを明確にし、それを認めた上で、二度と同じ過ちをしないことを誓う気持ちが込められています。まさに罪を謝るのです。
これに対して、お詫びとは、もう少し広い意味で使われたりします。本当はこちら側に落ち度(責任、過ち)はないけれども、相手が不快に感じたような場合にも使われたりします。「悪天候が続き、閉園せざるをえないことにつきお詫び申し上げます。」というように使ったりもします。つまり、お詫びには、謝罪よりも広い意味で使われる傾向があるということです。
そのため、本来自分の過ちによって、相手に損害を与えてしまった場合に、「お詫び申し上げます。」などと言うと、反省していないのではないか?本当に自分のやったことを認めているのか?等と反発を受けてしまったりします。
謝罪、お詫び、遺憾という言葉を使うときには、必ず問題が生じているときです。そのため、これらの言葉を使うときは、少し神経質に使い分けをしてもいいのではないかと思います。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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