労働組合法18条って?
労働組合法18条という条文は、労働関係を専門にしている弁護士でもあまり見る機会のない条項です。 2022年2月7日の日経新聞によると32年ぶりにこの条文が適用されたということです。
18条「一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第二後の規定により修正のあったものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。」という規定です。
ケーズホールディングス、ヤマダホールディングス、デンコードーなどの茨城県内の大型家電量販店について、各社の労働組合との間で、正社員について、年間休日を111日以上とする労働協約が締結され、2021年9月22日に厚生労働大臣より、茨城県全域における大型家電量販店は、自ら協約を締結していなくても、この規定の適用を受けることになります。職種別のジョブ型雇用では、このように地域毎に同じ労使協約が適用されることは比較的馴染みやすい規則ですが、終身雇用型で企業別労働組合が原則の日本では珍しい取組です。もっとも、家電量販店の社員の年間所定休日は110日程度ということですから、素晴らしい取組だと思います。
通常、都道府県内で行う場合は、その管轄する地方労働委員会に提出し、都道府県知事が決定しますが、他県にまたがる場合は中央労働委員会に提出し、厚生労働大臣が決定することになっています。今回の家電量販店のケースでは、厚生労働大臣が決定したのに、地域が茨城県全域に限られていることに疑問がありましたが、内容を確認すると、今回は当事者が「茨城県全域と隣接県の一部市町村」を対象として申出をしたため、県をまたぐということで厚労省扱いとなったものの、厚労省で他県への影響、分かりづらさを考慮して、茨城県内に限って決定したということが分かりました。
本来、地域内の大多数を占める家電量販店とその労働組合が隣接県の一部市町村も含むように申出をしたのに、このような素晴らしい取組を行政が混乱回避の理由で限定的に判断することは残念なことです。
今後、ジョブ型の働き方が増えてくると、労働組合法18条が適用される場面が増えてくるかもしれません。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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