「やさしさ」にふれた3月
人財塾4期生の増原敏夫です。
3月に修了した人財塾。あっという間でしたが、多くの学びと多くの出会いに恵まれた1年間であったと考えています。中でも、最終3月にお会いした、お二人とのお話を紹介したいと思います。
在学中、偶然に偶然が重なり就任した委員長として取り組んだ全体研究では、先生方や同期の方々はもちろんの事、鹿児島 ラグーナ出版の皆様のご協力のもと書籍として形あるものを残せたこと、そこに少しばかり関われたことに感謝と感動を覚えています。
そしていつか、お世話になったラグーナ出版様を訪問し、お礼の言葉を伝えたいと考えていました。
そう考えていた私が、急ぎ鹿児島に行く事を決めたのは、3月のプロジェクト研究発表が終わってすぐ、偶然にも鹿児島で一人暮らす兄の様子がおかしいと連絡が入ったからです。
兄の住所は、偶然にもラグーナ出版様の事務所から徒歩で数分の場所でした。
私はラグーナ出版の川畑社長様に訪問させていただく了解を得て、まずは兄のマンションに向かいました。
兄の状況については、ある程度の覚悟はしていましたが、想像を超えたものでした。
鹿児島で一人事業を始めていた兄は、コロナ禍による事業の停滞、母の急死、その他の様々な要因により精神的に追い詰められているようでした。
食事もまともに摂っておらず、掃除も洗濯もできず、ただ椅子に座っているだけの兄に、私はかける言葉を持っていませんでした。
ただ「実家のある岡山に帰らないか?」と言うだけでした。
翌日、ラグーナ出版様を訪問し、初めてお会いする川畑社長様やラグーナ出版の皆様に、ご挨拶と編集のお礼の言葉を述べることができました。その後、川畑社長様に作業場を案内していただいたのですが、3階の作業場の窓から、私には兄のマンションが見えたような気がしていました。
そして、作業場にあるテーブルで川畑社長様とお話をさせていただいた際、少しだけのつもりで兄のことを川畑社長様にお話ししました。
近くに住んでいる事、食事を摂っていないこと、事業の事、母の事、猫の事・・・
話しながら私は、自分の無力さに涙していました。
その日初めて会った私でしたが、川畑社長様は真剣にそして優しく話を聞いて下さいました。そして私にパンフレットを2冊渡してくださりながら言われました
「増原さん、家族だからできることもある。家族じゃできないこともある。出来ないことは専門の人に任せてみたらいい」
パンフレットは「ラグーナ診療所」のものでした。川畑社長様は続けて、
「このパンフレット、1冊は増原さんが、もう1冊はお兄さんにそっと渡してください。
それと、時間があるのでしたら、この後あってもらいたい人がいます」
川畑社長様についていった先におられたのは、森越先生でした。
診察の合間をぬって、私の・私の兄の話を森越先生も聞いて下さり、先生は
「いつでも診察に来てください。もしお兄さんが動けないようなら、往診に行きますよ」
と、言ってくださいました。
森越先生もまた、初めてお会いしたにもかかわらず、親身になってお話を聞いて下さいました。
お二人の優しい言葉に、私は涙を堪えることができませんでした。
帰り際、川畑社長様が最後に「増原さん、待っています」と声をかけてくださいました。
私は、私と兄の未来に明るいものを感じながら、鹿児島を後にしました。
1年の間学んできた「人を大切にする」ということ、その根底には必ず「やさしさ」があるように思います。鹿児島に行ったことで、本当の「やさしさ」に触れたような気がする3月でした。
有限会社ネクサス(野波税理士事務所) 増原 敏夫
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