障がい者への新たな就労支援策
社会保障審議会の障害者部会は6月13日、障害者支援制度の見直しに関する報告書をまとめ、障害者が希望する仕事に就けるよう適性評価などを行う「就労選択支援(仮称)」の導入を提言した。これを受け厚労省は、秋の臨時国会に障害者総合支援法改正案を提出し、早ければ2024年度の導入を目指すとのこと。
就労選択支援では、就労支援事業所や自治体の就労支援センターなどの関係機関がチェックシートを使って本人の適性や能力を把握(就労アセスメント)し、結果を市区町村やハローワーク職員等で共有して就労支援に役立てるとしている。就労アセスメントは、単に対象者の就労能力や適性を評価するだけのものではなく、本人と協同して、ニーズや強み、職業上の課題等を明らかにし、就労するにあたって必要な支援や配慮を整理することを含むものとしている。
障がいを持つ人の就労は年々増え、民間企業で約60万人余が雇用されてる。しかし、その平均勤続年数は身体障がい者で10年程度、知的障がい者で8年弱、精神障がい者で4年強と短く、近年伸びていない。精神障がいのある新規入職者の約半数は1年以内に退職している実態にある(障害者の就業状況等に関する調査2017年)。障がい者が働き続けられない理由に職場の人間関係、賃金労働条件への不満、配慮不十分、通勤困難などが挙げられている。
これまでも様々な先進企業の取り組み事例から、能力の発揮にはその特性を考慮した配置・業務の割り当てが重要とされてきた。その人の特性が考慮されずに配置が行われ、正当に評価を受ける機会のないまま離職に至る。そのような不幸な事例をたびたび見聞きする中で、この就労選択支援の取組は、採用する側・働く側双方にメリットがあり、一歩前進と言える。得手不得手を含めて、誰もが当然に様々な個性・特性を有している。今後、業務適性に疑問や違和感を持つすべての人に範囲を広げた仕組みへとつながることを期待したい。
ただし、特性に応じた仕事を得られたとしても、成績主義や障がいに理解のない組織風土ではうまくいきそうにない。坂本光司会長や特別支援学級の卒業生が定年まで働く日本理化学工業大山会長(故人)など多くの先達が教えてくれるように、人を大切にする経営の実践こそが、究極の解決策であると再確認する次第だ。
人材塾4期生 ブレイスFP社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 北村 博昭
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