裁量労働制に対する誤解
裁量労働制の対象として、2024年には、労基法の改正をすることなく、従前より課題となっていた企画業務型の裁量労働制が認められる方向であるとのことです。業務として追加されるのは、「課題解決型開発提案業務」、「裁量的にPDCA(立案・試行・結果測定・本格実施のサイクル)を回す業務」です。
課題解決型開発提案業務とは、たとえば取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた商品やサービスを開発するような業務のことであり、裁量的にPDCAを回す業務とは、全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その課程で示された意見等を見て、さらなる改善の取組計画を企画立案するような業務のことを指しています。
もともと裁量労働は、労働者が自らその労働の遂行を決定できる仕組みであり、一見すると労働者のための仕組みに見えますが、一面で時間外労働が把握しづらくなり、過剰な労働となるため、健康被害が生じるリスクを持ち合わせている仕組みですので、制限的に認めることになっています。
経営者の中には、裁量労働にすれば、いくらでも働かせられる、と誤った知識の元、不当な労働を社員に強いているケースがあります。しかしこれは誤った知識に基づく違法な行為です。
まず、ご承知のとおり裁量労働制度を導入するためには、労使間で労使協定が必要となります。そしてその労使協定で定められた時間が、みなし労働時間となり、どのような働き方をしてもその「みなし労働時間」働いたことになります。
では、みなし労働時間はどのように労使間で決めるのか。その判断基準は、「当業務の遂行に通常必要とされる時間」でなければなりません。これは労使協定を結ぶ際に労働者側も見極めが必要です。仮に一日の所定労働時間が10時間必要となるような業務であった場合、労使協定では10時間を前提に労使協定を結び、36協定も結んだ上で、法定の8時間を超える分の2時間分は、時間が手当を込みにしてみなし労働時間働いたことにしなければなりません。
この場合、もし通常必要とされる時間が10時間であるのに、8時間としてみなし労働時間を定めても、労働者から請求をされれば、2時間分は時間手当も含めて支払いをしなければならないことになります。
また裁量労働の場合でも、休日労働や深夜業には割増賃金の支払をする必要があります。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
コメントを残す