「信頼」は、法律では規定されているのか
商取引においては、「信頼」が第一です。信頼がなければ、取引自体が成り立たなくなってしまいます。この「信頼」、法律では何か規定があるのでしょうか。
商取引は、通常、契約書に基づいてなされます。それでも問題が生じる場合があります。たとえば、「商品を3月12日に引き渡す」とのみ記載されている契約の場合に、たとえば売主が、「商品を3月12日午後11時50分に、大阪港(買主の本社は東京)で引き渡します。それを受け取れなかったら、それは買主の責任です。」といったらどうでしょうか。これは通常の商取引からすると、大きく信頼を損なう行為だといえるのではないでしょうか。まして契約書がなく、口頭で約束したような場合には、尚更信頼を損なわれるような場面が生じやすくなります。
また、たとえば契約前の説明に不誠実な説明がなされた場合はどうでしょうか。まだ契約前のことなので、契約上の問題ということはできません。
このような場合に、民法は、信義誠実の原則(信義則)という規定を置いています。
民法第1条第2項「権利の行使または義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」がそれです。つまり、倫理的な誠実さを欠く行為は許されないということになります。
それは昔から3つに類型化されています。
1)義務者の利益が不当に害されるにもかかわらず形式的に権利を主張し尽くす態度
2)不誠実な行為により取得した権利を主張すること
3)以前の行為に矛盾する行為をすること
このように法律においても、「信頼」を害するような行為は法律的に保護されない、つまり認めないのです。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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