労働法関連法改正規定の施行(4月1日より)
既にご準備をされていることと思いますが、2023年4月1日より改正された労働法制の主な条項をご確認ください。
1.給与のデジタルマネーによる支払
給与(賃金)の支払に関しては、労基法上は現在も「通貨」の「直接」支払いという規定になっています(労基法第24条第1項)。通常行われている銀行口座への振込は、法律では、労基法規則第7条の2第1項で「労働者の同意」を条件に認められています。これに加えて、厚生労働省が「資金移動業者」として指定を認めた業者を利用しての支払が可能となりました。
もっとも4月1日付けにて資金移動業者の指定申請が開始していますので、業者が確定するのにしばらく時間がかかります。
その上で、デジタルマネーによる支払をする場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か、ない場合は労働者の過半数を代表する者との間で、賃金デジタル払いの対象となる労働者の範囲や取扱指定資金移動業者の範囲等を記載した労使協定を締結する必要があります。その上で、給与のデジタル払いを希望する個々の労働者は、留意事項等の説明を受け、制度を理解した上で、同意書に賃金のデジタル払いで受け取る賃金額や、資金移動業者口座番号、代替口座情報等を記載して、使用者に提出することになります。
2.割増賃金率の引き上げ
人を大切にしている会社には無縁のことと思いますが、4月1日より中小企業において、1か月60時間を超える法定時間外労働に対する割増率が、それまでの25%から50%以上にするよう引き上げられました(労基法37条)。
これまで中小企業に対しては、法適用が猶予されていましたが、4月1日以降は、会社の業種、規模、従業員数に関係なく、1か月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
3.育児休業取得状況の公表義務
常時雇用する従業員数が1,000人を超える会社は、年に1回、男性の育児休業取得の状況を公表することが義務づけられました。自社のホームページや、厚労省の「両立支援のひろば」(https://ryouritsu.mhlw.go.jp/)にて、次のどちらかを公表しなければなりません。
1 男性の育児休業等の取得率
会社が雇用する男性社員について「公表前の事業年度中に、配偶者が出産した者の数」に対する「公表前の事業年度中に、育児休業等を取得した者の数」の割合をいいます。
2 男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率
育児休業以外の独自の休暇制度がある会社が雇用する男性社員について「公表前の事業年度中に、配偶者が出産した者の数」に対する、「公表前の事業年度中に、育児休業等を取得した者の数」と、「小学校就学前の子を養育する従業員に向けた、育児を目的とした休暇制度(育児休業及び子の監護休暇を除く)を利用した者の数」の合計人数との割合をいいます。
未だに世の中では、男性の育児休業の取得率が低いと言われていますが、これを機に一気に男性の育児休業取得が活性化することを期待します。
(学会 法務部会 弁護士山田勝彦)
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