分かりづらい「振休」と「代休」の意味
休日出勤をした場合、代休をとれるようにしているのが一般的かと思います。しかし、この「代休」の法律的な意味については、とても分かりづらいものがあります。
休日出勤の場合の対応については、「振替休日」というものと「代休」というものがあります。大切なことは、振休と代休は全く別の制度だということです。
振替休日とは、休日出勤日より前に、予め、休日出勤を命じるとともに、振り替えの休日を指定することになります。この場合は、「休日出勤」とはならず、単に「休日」が移動したこととなります。したがって、この場合、振り替える日(働く日)を含む4週間以内の日に振り替えなければなりません。これは単に休日が移動するだけなので、休日出勤の時間外手当は発生しません。月給20万円の社員は、その月の給与は20万円のままです。
代休とは、予め振り替え日を決めることなく、休日出勤した後に、代わりの休みを取らせるものです。多くの会社では、このような代休の制度を就業規則にもうけているのではないでしょうか。この代休の制度は、法律上の制度ではなく、あくまで会社で決められた制度ということになります。
たとえば、月給20万円の社員が、休日に働いた場合、振替休日をしていなければ、休日の時間外手当が必要となります。つまり、法定休日に1日働いたのであれば、1日の給与を1万円と想定すると10,000円×1.35=13,500円を付けて213,500円が給与額となります。
代休制度がある場合、たとえば日曜日に働いた次の週の水曜日に代休をとるとします。この代休は、有給扱いか無給扱いかにより、時間外手当の計算が異なってきます。この代休が無給扱いであれば、1日分は代休で働かなくて良くなったので、1日分の給与が差引かれることとなり、その結果、計算上、時間外手当分は10,000円×(1.35-1)=3,500円となり、この月の給与は203,500円となります。比較的多くの会社はこのような就業規則を設けていると思います。
では、就業規則上、代休は無給ではなく有給(有給休暇とは別です)としたらどうでしょうか。実質的には、1日の特別有給休暇が取れるということになります。
具体的には、その月の給与は213,500円となり、代休もとれることになります。
本来、労基法では週1日の休日を原則としています(労基法35条1項)。4週間に4日与えればいいということにはなっています(同35条2項)が、人は最低週に1日は休むべきというのは、もはや世の中の共通の認識になっていると思います。
週1日の休日を確保し、できるだけ休日出勤は社員にさせないという覚悟があれば、代休は無給とせず、特別有給休暇として付与するという制度設計もありうるのではないかと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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