身近な多様性
経営人財塾5期生の金井崇晃です。長野市で弁護士事務所を経営しつつ、同市の隣にある須坂市で認定こども園1園を運営する学校法人曽沢学園の理事長を務めております。
教育界においてインクルーシブ(包摂)教育の重要さが説かれて久しいですが、インクルーシブ教育とは障がい児教育のことのみをいうわけではありません。健常児と障がい児を分けて教育を行うというかたちは、その障がい児の発達具合、個性に見合った個別具体的な教育を行うという点では優れているかもしれません。
しかし、そこでは「健常児」を一括りにしているきらいがあります。幼稚園児でも、健常児(と思われている)の子どもによって、数字に関心が高い子もいれば文字に関心が高い子もいるし、動物に関心が高い子もいれば昆虫に関心が高い子もいる。1+1=2を理解する道のりは子どもによって違ったりします。興味関心の内容は子どもそれぞれだし、学び方も子どもそれぞれ。つまり、健常児であっても、一人ひとりの教育ニーズは異なるはずです。
弊園では、幼児教育においては自然保育・モンテッソーリ教育の実践を通じて、健常児・障がい児の垣根なく、一人ひとりの教育ニーズに環境整備をもって応えることを目指していますが、法人の代表者としては、この考えを少し広くとらえて職員と向き合うことの大切さも感じています。
法人の代表者として、職員一人ひとりの本来異なるはずのニーズにどれだけ気付くことができているかということです。
例えば、健常な大人であっても、人によって言いやすい環境、タイミングは異なります。
理事長面談という1対1の環境だから自らの意見を言いやすい人もいればそうでない人もいる。立ち話の方が言いやすい人もいる。紙媒体だから言いやすい(書きやすい)人もいる。アプリ上のチャットだから言いやすい(書きやすい)人もいる。どんなツールがあってもやっぱり言いにくくて人伝いが言いやすい人もいる。無記名のアンケートでなら自分の意見を言えるという人もいる。
このように、言いやすい方法・タイミングは人によって異なります。人は本来多様であるということを強く意識すると、職員の意見表明の場一つとっても、個々の職員の個性に応じて言いやすい環境を整えておかなければならないことに気付かされます。
経営者同士でお話していると、ときどき、「自分は話しかけられやすいタイプだし、日々気にかけて自分からコミュニケーションをとっているから、社員の意見は聞けている」というお話も聞きます。
でもそれはあくまでその経営者から見えている景色であって、社員が言いたいこと言えているかは定かではありません。
言いやすいかどうかは自分(代表者・会社側)が判断することではなく、職員・社員が判断することです。多様な社員がいることを前提とすると、社員が言える選択肢を多数用意し、タイミングを本人にゆだねることが必要になってきます。
多様性とは、障がい者、高齢者やトランスジェンダーの方々のことだけをいうのではありません。私たち一人ひとりが本来的に個性的で、一人ひとりが違う、ということです。
人を大切にする経営には、その一人ひとりの違うに限りなく寄り添うという(途方もないと思われる)道も(当然に)含まれているのだろうと考えています。
人財塾5期生 ながの法律事務所・学校法人曽沢学園 金井崇晃
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