契約書の「サステナビリティー条項」
日本経済新聞「主要企業7割が人権デューデリ実施 外部から対応要請も」(2024年2月3日付け)の記事によれば、同社が2023年10月に「人権デューデリ(人権DD)」に対する調査を行ったところ、239社から回答があり、調査の結果、84.9%(203社)が自社の人権順守の考え方や対応の方向性を示す「人権に関する方針の策定」を行い、人権DDを実施したのは68.6%(164社)だったそうです。その中で「(取引先に人権対応を求める)『サステナビリティー条項』を契約に盛り込む」との回答が30.5%(73社)あったとの指摘がありました。
契約書にサステナビリティー条項を入れた契約書を公表しているのは、東京オリンピックの競技大会組織委員会の調達コードです(調達コード解説.pdf (tokyo.lg.jp))。
この条項を参考にサステナビリティー条項の案を作ると次のようになります。
(乙が受託者、甲が委託者を前提とします。)
「第○条(持続可能性の配慮)
1 甲及び乙は、物品・サービス等の製造・流通等における持続可能性の配慮を両者の共同の取組として推進するために、本条項に合意する。
2 甲は、調達する物品・サービス等の製造・流通等について遵守すべき項目及びその内容(以下、「サスティナビリティー遵守事項」という。)を策定する。
3 乙は、2項のサスティナビリティー遵守事項を確認し、その実施に向けて必要な措置を講じる。
4 乙は、乙のサプライチェーンに対して、サスティナビリティー遵守事項又はこれと同様の調達方針等の実施を求めるなどの働きかけを行う。
5 甲は、乙に対し、サスティナビリティー遵守事項の実施に取り組む上で有用な情報を提供するよう努める。
6 乙は、甲の求めに応じて、甲に対し、サスティナビリティー遵守事項の実施やサプライチェーンへの働きかけの状況を報告する。また、乙は、乙又は乙のサプライチェーンにおけるサスティナビリティー遵守事項の不遵守またはその疑いを生じ得る事実が判明した場合、甲に対し、速やかに報告する。
7 甲は、乙のサスティナビリティー遵守事項の実施状況を調査し、又は第三者による監査の受け入れを求めることができ、乙は、これに協力する。また、乙は、甲の求めに応じて、乙のサプライチェーンに対し、サスティナビリティー遵守事項の実施状況を調査し、又は第三者による監査の受け入れを求める。
8 甲は、乙にサスティナビリティー遵守事項の不遵守があることが判明した場合、乙に対し、改善措置を要求することができる。 また、乙は、乙のサプライチェーンにおけるサスティナビリティー遵守事項の不遵守が判明した場合、甲の求めに応じて、乙のサプライチェーンに対し、改善措置を要求する。
9 甲は、前項の甲の乙に対する改善措置の要求にもかかわらず、乙が相当な期間内にサスティナビリティー遵守事項の不遵守を是正せず、その結果サスティナビリティー遵守事項の重大な不遵守が継続した場合、乙との間の調達契約を解除することができる。
10 甲が前項の規定により、乙との間の調達契約を解除した場合、乙に損害が生じたとし ても、甲は何らこれを賠償ないし補償することを要しない。]
今後、このようなサスティナビリティー条項が記載された契約書を見ることになる機会が増えていくと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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