優秀な人財を傍に置く
経営学者の菊澤研宗氏によれば、組織が合理的に判断を下しているように見えても、実は不合理な結論に流れてしまう傾向として、次の3点を指摘しています。
1 組織全体の合理性と組織に参加している個別の合理性とが一致しない場合には、全体の合理性を捨てて個別の合理性を選択してしまうため、全体が非効率的となってしまう傾向
2 正当性(倫理性)と効率性が一致しない場合、正当性(倫理性)を捨てて、効率性のみを追求し、不正な行為を行ってしまう傾向
3 長期的な結果と短期的な結果がある場合、長期的な結果を捨てて、短期的な結果を追求してしまうことにより、長期的に失敗してしまう傾向
いずれの場合も、当事者は合理的に判断しているつもりになっているので、問題が顕在化するまでその原因が分かりません。
これらの特徴を合せて見ていくと、経営者のとるべき姿勢が見えてきます。
1 自己の利益(利己)よりも全体の利益(利他)を考えること
2 効率性よりも正しいか否かで判断すること
3 目先の利益ではなく、長期的に永続する経営を行う視点で判断すること
しかし、完全な、完璧な人はいません。最初に書きましたとおり、このような傾向は、本人は合理的に考察しているつもりでも陥ってしまう特徴なのです。つまり、3つの姿勢に注意をしていても、時として至らない場合もあります。そんな時、最も重要なことは、経営者が他の意見を聴く姿勢をもつことです。特に反対意見を大切にする姿勢が必要です。他の役員や社員の反対意見と真摯に向き合うことで、過ちに気がつき軌道修正をすることもできるでしょうし、弱点のある考え方に気がつき、これを修正することもできるようになります。
経営者は、自己への批判者を大切にしなければならない理由がここにあります。経営者は優秀な人財を傍に置くことの重要性がここにあるのです。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)
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