間接差別とは
令和6年5月13日東京地方裁判所が一般職と総合職の社宅手当の差について、女性に対する「間接差別」であると判断した判決が出され、そのまま控訴されずに5月末に判決が確定しました。
「間接差別」は、2007(平成19)年の男女雇用機会均等法改正により、第7条として追加された規定です。直接的な性差別ではなくても、男女の比率その他の事情を踏まえて実質的に差別を理由とするおそれがある措置は、事業主に合理的な理由がなければならないとするものです。その具体例は男女雇用機会均等法規則第2条にて次の3通りが明記されました。
(1)労働者の募集又は採用にあたって、労働者の身長、体重または体力を要件とするもの
(2)労働者の募集、採用、昇進、職種の変更にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの
(3)労働者の昇進にあたって、転勤の経験があることを要件とするもの
これらの3つの場合には、会社に必要性と合理的な理由がなければ男女を区別してはならないとされていたのです。
今回の判決は、一般職はほとんど女性であるが、住宅手当は当初月3,000円、後に15,000円とされており、総合職は1名の女性を除き他は全員男性で、その総合職には、家賃の8割を会社が負担するという制度をとっていました。
東京地裁判決は、①その社内措置に業務遂行上の必要性があるか、②措置の対象になる男女の比率はどうか、などを判断基準として、会社に直接差別はないとしたしながらも「事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることに合理的理由は認められない」と結論付け、会社に損害賠償と慰謝料合わせ378万円の支払いを命じました。
このような判決が出されていることから、今後も上述した規則2条の3通りの項目に当たらないものでも、間接差別と判断される可能性が出てきました。本件会社も意識的に差別をするつもりはなかったかもしれません。
今後は、長年会社に存在している制度が間接差別になっていないか、改めて確認する必要があります。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
コメントを残す