「待つ時間」を大切に

法務省が主唱する「社会を明るくする運動」(社明運動)が74年目となりました。もともとこの運動は、1949年に戦後の荒廃した町にあふれた戦争孤児など、多くの子どもたちの将来を思って銀座商店街有志が行った「銀座フェアー」が元になったといわれています。

1951年に法務省を中心として、犯罪や非行の防止、犯罪や非行をした人たちの立ち直りを支える活動である更生保護について理解を深めることなどを目的として実施されました。当時の状況は、NHKの朝ドラ「虎の翼」でも背景として取り上げられていました。

 第74回社明運動のコンセプトは次の3つです。

① 孤独・孤立や生きづらさは誰もが抱え得る問題であるということを共通理解とし、人と人とが穏やかにつながる包摂的な地域社会を目指すこと

② 「人は変われる」ということを信じ、人が「変っていく時間」をポジティブなものと、希望を持って受け止めること

③ 「希望を持って『立ち直り』を待つ更生保護ボランティア」の存在をさらに周知すること

 第74回社明運動のポスターも素敵です。

 「想う、ときには足をとめ。

  誰だって、すぐには本音を話せない。

  誰だって、すぐには希望を抱けない。

  誰だって、すぐには変ることができない。

  でも、たとえ時間がかかっても、たとえ過去にあやまちがあっても、誰かと一緒なら希望はある。

  声をかけ、背中を押し、あきらめずに寄り添い続ける。

  信じて待つ人の存在は、立ち直りへの大きな力になるだろう。

  私たちに「待つ時間」が、きっと誰かの「変っていく時間」。」

 最近は、「タイパ」(タイムパフォーマンス)というように「時間をかけること」や「待つこと」をネガティブに考える「ファスト文化」が若い人たちを中心として現代日本の風潮といわれています。

 そんな地代だからこそ、結論を簡単に出して決めつけることなく、「待つ時間」を大切にしたいものです。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です