No345記憶に残る言葉【株式会社ケーズホールディングス;加藤修一代表取締役会長(当時)】

今回は2013年3月の「第3回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」にて実行委員長賞を受賞され、2015年9月に開催された「人を大切にする経営学会 第二回全国大会」において“がんばらない経営”をテーマとして基調講演をされた株式会社ケーズホールディングス加藤修一代表取締役会長(当時)のお話から同社の経営や印象的だったお話についてご紹介させていただきます。
加藤修一氏は1982年から2代目の社長として父の教えを“がんばらない経営”として具現化させて、町の電気屋さんを業界有数の家電量販店に成長させました。2011年からは会長職をされています。(2017年には会長職を退任)

https://www.ksdenki.co.jp

●概要(現在のHPより)
商号 株式会社ケーズホールディングス
本社所在地 茨城県水戸市城南二丁目7番5号
創業 1947年(昭和22年)3月
資本金 181億25百万円(※2024年3月期連結情報)
代表者 代表取締役社長執行役員 吉原 祐二
事業内容 家庭電化製品並びに関連商品販売および付帯工事・修理
売上高 7183億69百万円(※2024年3月期連結情報)
従業員数 16,099名(うち臨時従業員数 8,792名)(※2024年3月期連結情報)
店舗数 556店舗(直営:552店舗/FC:4店舗)(※2024年3月末現在)
子会社 株式会社デンコードー、株式会社ギガス、株式会社関西ケーズデンキ、株式会社ビッグ・エス、株式会社北越ケーズ、株式会社九州ケーズデンキ、株式会社ケーズキャリアスタッフ、株式会社ケーズデンキテクニカルサポート、株式会社ケーズキャリーサービス

●沿革
1947年 加藤馨氏が水戸市にラジオを主体とする販売・修理業を開店
1955年 有限会社加藤電機商会を設立
1980年 カトーデンキ販売株式会社設立
1982年 加藤修一氏が代表取締役社長就任
1988年 株式店頭公開(2002年に東証一部に昇格)
1997年 株式会社ケーズデンキに商号変更
2007年 株式会社ケーズデンキホールディングスに商号変更

●創業者であり父;加藤馨氏の教え(“迷ったら損するほうを選べ”
事業の現場では儲けることが当然です。ましてや目の前にお客様がいたり、確実に売れることが見込まれるときに“売らない”という判断はなかなかできるものではありません。しかし創業者の父、加藤馨氏の姿勢は違っていました。一見不親切だと思う判断でも長い目で見たらどうか、お客様の目でみたらどうか、父の判断は結果としていつも間違っていなかったと言います。
例えば、職域販売を中止したこと。ある会社の職場に通って独占的に販売すれば売上は上がりますが、お客様の住居は県全域になることでアフターサービスが十分できないと判断。遠方販売の可能性がある職域販売を中止しました。同様な理由でお店での販売においても遠いお客様には販売しなかったと言います。

●創業者;加藤馨氏が導入(社員の定着と将来資産を願う仕組み)
戦後しばらくは、数年勤めた社員が退職金を手に独立することが普通でしたが、昭和40年代に入り、世の中は急速に変わっていきます。同社でも苦楽を共にした社員10数名が退職・独立していきましたが、簡単に成功する時代ではなくなっていました。
そんな彼らを心配した創業者;加藤馨氏は、社員が会社にいながら財産を築けるような方法を模索します。その結果、全社員に会社を一旦辞めてもらい、その時の退職金をもとに従業員に(自己判断で)新会社の株主になってもらうことでした。そのようにして1980年カトーデンキ販売が設立されました。毎年配当をし、それを増資に回してもらうことで資本金を増やし会社を成長させていきました。
当初の配当は20%でした。社員が定年退職する頃にはひと財産になればとの思いです。
社員が独立して失敗することを避け、長期的な財産作りをサポートしたのです。
今(2015年頃)ではストックオプション制度(10%補助あり)となり、さらに株式配当は2%ほどを継続しています。当時一番古い社員が一番多く出資した約100万円は、退職後も株式を持ち続けた結果、約10億円の資産となり、配当金も毎年1600万円ほどになっているとのことでした。

●経営は終わりのない駅伝競走
“経営者はたすきを受けたランナーに過ぎない。次のランナーにたすきを渡すために努力している。従って、会社を継承する人財を育てバトンタッチすることが経営者の役目”と言います。
会社を永続させることが経営者の最大の使命です。一人で走るマラソンではないのです。

●印象的だったお話
・企業は常に100%の力を出し少しでも業績を伸ばすことを求められているという意見がある中、以下のようにお話されました。
“経営とはどのような状況にあっても対応できる余力や選択肢をもっていなければならない。会社は急に大きくすると寿命がきてしまう。寿命がこないように会社はゆっくり大きくするもの”
・社員についての例えば話として
“9割が悪い社員なら、良い社員が辞めるが、9割が良い社員なら、悪い社員が辞める”

●最後に
同社は社員が1番、取引先が2番、お客様は3番、最後に株主であることを明確にしています。
同社のがんばらない経営は、ノルマなし残業なしと言えば社員に甘いのではと誤解されがちですが、安定的な成長は社員の成長が支えています。他社にはないような仕入れ担当者の役割、本部と店舗の役割、店舗で社員のやるべきことが洗練されています。結果として他社と差別化されています。そして“やるべきこと”と同時に“やらないこと”を明確にしている経営は特徴的でした。

これから大きくビジネス環境が変化する中、同社がどのように安定成長を続けていくのか注目したいと思います。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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