信義と誠実
民法の第1条に基本原則として信義・誠実の原則というものがあります。信義則とも呼ばれています。民法は、人と人との関係を規律する法律であり、雇用契約も請負契約を含む企業活動に関わる全てに関係する法律です。
条文には、次のように書かれています。
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」
教科書的な解説では、信義誠実の原則とは、社会共同生活の一員として、互いに相手の信頼を裏切らないように、誠意をもって行動することと言われています。
これは、「信義」とか「誠実」とか、一見すると倫理的な基準を法律として位置づけていることになります。
信義は、国語辞典によれば、「いったん約束した事は、時間がたって環境が変っても、その通りに実現すること」と言われています(新明解国語辞典)。
誠実は、「言動にうそ・偽りやごまかしが無く、常に良心の命ずるままに行動する様子」と言われています(同左)。
私たちの生活の中には、この信義と誠実が基礎となって人間関係が成り立っているということになります。人とした約束は守りきること、嘘ごまかし無く良心に従って行動することが求められているのです。
もしこれに反することがあれば、権利は認められず、義務は行っていないと評価されることになります。
この信義と誠実は、人との間の関係、会社間の関係にとって最優先されなければならない事項なのです。
今、世の中を見渡すと、この信義と誠実が損なわれているように思います。
企業経営にとっても、この信義と誠実は、最も大切にしなければならない原則だと思うのです。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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