大切にしている言葉
ぼくはみんなが楽しんで喜んでくれるのが一番嬉しい。でもすぐにそれが分かったわけではないんだよね。(やなせたかし)
アンパンマンがなぜ自分の顔をちぎって子どもたちにあんパンをプレゼントするのか。この意味が、私は幼少のころよくわかりませんでした。だから特にやなせたかし氏のファンでもありませんでしたし、30歳を過ぎてこの言葉に出会ったときも、最初のうちはよく意味を理解していませんでした。
それから何年か経ち、会社で社員さんたちと向き合いながら様々なことに取り組んでいるうちに、「あぁ、なるほどなぁ」と思う瞬間が、ふと訪れました。
私も「みんなが楽しんで喜んでくれるのが一番嬉しい」と、自分の心の深いところに、かすかに芽生えはじめたその気持ちに気づいたとき、後半部分が「あぁ、その通りだな、図星だな」と思えて、少し笑えたというか、恥ずかしさの入り混じる照れ笑いが込み上げてきました。
株式会社三富子ケースは、宝石や勲章、メダル、理化学機器などを収納するケースをつくっています。中身を守ったり、使いやすくしたり、輝きや魅力を演出するケースを、ハンドメイドの小ロット受注生産でつくっています。
主役となる中身を収納するケースは、脇役、黒子、陰の立役者、縁の下の力持ち、引き立て役といった性分ですが、これが私の性格にぴったりでした。まさに天職です。
中学・高校の部活は吹奏楽部でしたが、トランペットやフルートといった花形楽器より、中低音域のオブリガート(副旋律・助奏)の方が好き。舞台の中央に立つより、裏方で大道具や小道具をつくっている方が好きなのです。4番でサードより、トンボを持ってグラウンドを平らに整える方が愉しい。
平澤興先生の「人生において、人に喜びと希望を与えることが最高です。あなたも自信をもって堂々とこれを実行してください」という言葉は座右の銘となり、小さな紙に書き留めて毎日持ち歩きました。
人の役に立つことを目標にし、自分ではなく他人を喜ばせる力、「他喜力」を磨こうと思うようになっていきました。
15年ほど前、「真の強者は、弱者にやさしい」という坂本先生の言葉に触れてから、街なかや駅の構内で白杖を持つ人が気になるようになりました。声を掛けようと思い、好機をうかがっていましたが、なかなかその機会に恵まれません。
そして、絶好の機会は突如として訪れます。しかし、白杖を持つ方が目の前を通り過ぎようとしたとき、急に物怖じしてしまい、声を掛けられませんでした。意気地なしの、不甲斐ない姿でした。立ちすくんだ後、その場をゆっくりと離れ、人混みから遠ざかると、悔し涙があふれてきました。
次回こそはと思い、セリフの練習をしました。「何かお手伝いしましょうか?」こんな簡単なセリフの練習を、何度も繰り返しました。
今では、目的地を尋ねて肩をお貸ししてお連れしたり、点字入り名刺をお渡ししてお話ししたり、少しずつできるようになりました。
人財塾の1年間に、自分は何のために生まれてきたのかと幾度となく思いを巡らしました。
この命を何のために使うか。みんなが楽しんで喜んでもらうために、人財塾で学びを深めた「五方良し経営」に人生を捧げたいと思います。
これからもよく考え、考え続けながら、生ききりたいと思います。 生まれてきてよかったと最期に言えるように。
人財塾7期生
株式会社三富子ケース
大畑仁人
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