No357記憶に残る言葉【千房株式会社;代表取締役会長 中井政嗣氏】

今回は2019年9月に大阪の立命館大学茨木キャンパスで行われた第6回全国大会の中から千房株式会社 代表取締役会長 中井政嗣氏の記念講演から印象的だったお話をご紹介させていただきます。同氏はお好み焼きを全国にチェーン展開する企業の創業者であり、近年では犯罪を犯した若者を更正させるために講演や活動を行っています。

ちょうど2025年3月17日の日本経済新聞の夕刊に千房の中井貫二社長(中井政嗣氏の次男)の記事が数日にわたって特集されています。
2代目社長になった経緯など驚く内容でした。合わせてご覧いただければと思います。

 https://chibo.co.jp/

●概要
千房ホールディングス株式会社
資本金 1000万円
本社事務所 大阪市浪速区湊町2丁目2番45号オンテックス難波ビル7階
設立 昭和49年11月
創業 昭和48年12月
役員 代表取締役会長  中井政嗣
代表取締役社長 中井貫二
専務取締役 相澤裕之
関連会社 千房株式会社、台湾千房股份有限公司

●中学卒業~創業
中井政嗣氏は1945年奈良県生まれ。中学校の卒業式翌日、父に連れられ大阪の乾物屋に丁稚奉公として働き始めます。そのときに父がくれた500円札1枚が全財産でした。ほどなく父は病気で亡くなってしまいます。
“厳しさには耐えられるが、寂しさには耐えられない”

中井氏は働き始めてから、欠かすことなく金銭出納帳をつけ続けていました。自分のお店をもとうと考え資金をためました。開店の際、信用組合が開店資金3000万円を融資していますが、金銭出納帳を長年つけていたことから無担保で融資しています。
そして1973年大阪ミナミにお好み焼き店を開店。今では(2019年9月時点)全国だけではなく海外を含めて77店舗を展開し、従業員数1430名が働く会社組織となっています。

●飲食業は愛のある接客業
飲食店は誰でもまねできる世界だと言います。立地・価格・味など現在ではすべてまねができます。お客様がなぜ来ていただけるか、それは人であり従業員一人一人、愛のこもった接客が大切だと力説されました。
「愛」の反対語は「無関心」と言われ、お客様に愛をもって接客する、無関心ではいけない。
一般には接客がわるいと会計の時に値引きするお店はないといい、自らに厳しくしていることが伺えました。

●印象的だったお話
・甲子園球場のビール売りのアルバイトは200人いるそうですが、売上ベスト5に入る人の就職先は引く手あまただそうです。同じ場所・同じビール・同じ値段・同じ制服。しかし売上には大きな差がでるのです。その差は何かということが大切。
・どんなにおいしいメニューを提供してもお客様がまずいと言えばまずいということ。
・ある人の言葉として“人の話は、眼で聴く。耳で視る。皆さんはラジオから川のせせらぎが聞こえると風景が浮かびますか?”
・現代社会は利己主義が増えた。“今だけ、ここだけ、お金だけ、自分だけ”
・経済・・・経世済民、数字や効率は経済ではない。世をおさめて民を救うことにある。

●社会活動
40才のとき4年間学んだ通信制の高等学校を卒業。260名いた入学者は42名まで減ったそうです。社長でありながら高校生。(ベンツで高校に通ったそうです!)
中井政嗣氏は青少年の教育に対して経験をもとにした熱い想いのある教育家としても注目を集めており、長年にわたる全国の講演活動やテレビ東京カンブリア宮殿などメディアに出演されています。
その活動は同社の採用にも現れています。一度犯罪を犯してしまった若い犯罪者を更正させるために過去38名を採用しています。さらに多くの企業に働きかけ地域や社会が連携してその輪を広げています。
今では飲食店に関するさまざまな団体や組織の要職にありながら、さらに「ミナミまち育てネットワーク執行役」「法務省の矯正広報大使」「職親プロジェクト発起人代表」など、青少年に関して精力的な活動を行っています。

●最後に
今まで同社を存じ上げていませんでしたが、大阪開催にふさわしい基調講演でした。中井政嗣氏の90分間の講演では、時間とともに聴衆者が求めているであろう内容をアレンジしながら瞬時に適切なお話を繰り出しているのだと感じ、講演の前と後では中井氏の存在がひときわ大きく見えていました。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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