地域社会との共生を実践する企業経営の大切さ
1 地域との共生
「人を大切にする経営」は「地域との共生」も大切にしています。人財塾の講義や視察で学ばせていただいた実践には、敷地内を地域住民に開放して憩いの場を提供したり、地域の子どもたちが参加するスポーツ大会を主催したり、地域の皆さんと一緒にお祭りを開催したりする等、本気で地域社会に貢献し喜ばれているものばかりで、「そこまでやるのか」と驚き、感動するものばかりでした。
2 名ばかりの「ESG」
大企業の間では「ESG」(環境・社会・ガバナンスに配慮した企業活動)を掲げ、これを企業価値のなかに位置付けている企業も少なくありません。しかし、こうした看板を、事業活動によって生じる深刻な公害や周辺住民の生活悪化から目をそらすための”目くらまし“にしてはいけないはずです。
私の地元・東京都昭島市ではゴルフ場を買収した巨大多国籍企業が日本最大級の物流センター・データセンター建設を計画し、着工目前です。同社は、自社ホームページで「地球環境を保全し、持続可能な社会を実現するため、事業活動による環境への影響を最小限に抑えることを目指します」「カーボンニュートラルの実現を目指します」「生物多様性を尊重し、生態系に配慮することが重要と考えています」「事業が社会に与えるインパクトを常に意識し、社会の一員として、地域社会に貢献できるよう社会貢献活動に積極的に取り組みます」等を掲げ、いわゆるESGファイナンス市場から1000億円を優に超える資金調達もしていると公表しています。確かに、同社の開発計画では地域貢献棟の建物や、公園の市への寄贈等が含まれており、これを歓迎する声もあります。
しかし開発計画の実態はどうでしょうか。推定3000本以上の樹木伐採、東京ドーム8.7個分の緑地喪失等によってオオタカやアナグマ、ホタルに象徴される希少な生態系が失われることが予測され、1日あたりのべ1万1600台もの車両(うち7060台は大型車)が片側1車線しかない道路、とりわけ周辺小中学校の通学路を走行するため、子どもたちの交通事故発生がとても心配されています。データセンター計画は、年間36億キロワットの電力消費量(昭島市全体の約6倍)を想定する日本一の規模であり、年間178.8万t排出されるCO2を再生可能エネルギーで賄うことは到底不可能です。排熱量は年間2万2000テラジュールに及び、25mプール354杯分の水を毎日沸騰させる規模です。周辺地域の気温上昇や、真夏の熱中症等の健康被害も心配されています。
ESGと相容れないこのような計画が、地域住民の心配や反対の声を押しつぶし、「地域に貢献する」という耳障りの良い宣伝文句のもとで進められようとしている現実があることは、残念でなりません。
3 人財塾での学びの実践
人財塾で学んだ一人として、子どもたちの命や生活環境を守りたいと切に願う住民のみなさんとともに、地域住民も安心できる計画への変更を当該企業に粘り強く求めています。今年2月には市民団体が東京都公害紛争審査会に公害紛争調停を申請し、公的機関による企業との対話の場づくりを進めています。私も当該団体の一員として、住民のみなさんとともに、水と緑豊かな住みやすい今の環境を次の世代に残せるよう微力ながら貢献していく決意です。
人財塾7期生
たいらか法律事務所
田所良平
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