No368記憶に残る言葉【社会福祉法人 藍;理事長;竹ノ内睦子さん(当時)】

今回は2012年と2013年に法政大学大学院の坂本研究室の視察でご訪問した『社会福祉法人藍』さんをご紹介致します。

 https://aikobo.or.jp/

●概要(現在のHPをもとに一部修正)
法人名 社会福祉法人 藍
所在地 世田谷区若林5-2-9 三喜ビル
代表者 理事長  大野 圭介
創業者 竹ノ内 睦子(初代理事長)
創業 1983年
法人設立 2003年
事業内容
 精神障がい者・知的障がい者の就労支援及び生活支援
 就労継続支援B型事業所 ファクトリー藍(藍染製品・織製品等の製作及び販売)
 就労継続支援B型事業所 アンシェーヌ藍(三軒茶屋レストラン)
 就労継続支援B型事業所 Navioけやき(軽作業やPC作業等)
 就労継続支援B型事業所 フェリーチェ・ディ・アイ(障害者施設製品の販売)
 共同生活援助事業所 ガーデン藍ⅠⅡ・Ⅲ・ⅣⅤ(世田谷エリアにてグループホーム運営)
 特定相談支援事業所 コンシェルジュ藍

●幼少時期
竹ノ内さんは1941年鹿児島生まれです。
校長であった父は満州へ出張中に交通事故にあってしまい廃人同然となってしまいます。母は看病のために満州へ渡り、9人兄弟の末っ子として生後6か月だった竹ノ内さんは、当時20才の長姉に育てられました。母は看病疲れから帰国することなく亡くなってしまいます。
中学生になった頃、長姉のところから何の相談もなく京都の兄宅に引き取られることになります。思春期の竹ノ内さんは“捨てられた”と感じたそうです。京都には知的障がいをもつすぐ上の兄も暮らしていて、初めて会いました。兄は京都の名門大学の付属中学に入らせてくれますが、“障がいのある兄の存在を隠し、お嬢様をふるまって生活している自分”に納得できず“環境に甘えずに自分を鍛えなければならない”という考えから、高校1年の時に自ら退学。
家をでて、寄宿施設のある高校に入り直しています。
その高校では “神は誰の前にもできないことを事柄として現すことはない。現わされたことすべては乗り越えられるものだ”、“積極的に生きるか、消極的に生きるかは自分次第”、そんな教えに触れます。その高校での学びは、竹ノ内さんの人生に大きく影響したのだと想像できます。

そんなある日、竹ノ内さんを追って、京都の兄のところにいたはずの知的障がいのある兄が高校まで来てしまいます。京都の生活が辛かったのでしょうか。寂しかったのでしょうか。
竹ノ内さんは障がい者であっても同じ人間としてさまざまな感情をもっていると思ったことでしょう。高校に通いながら兄の生活を支援し、その後には仕事や結婚、住居も世話をして、その人生を支え続けました。その行動力はどんな言葉よりも説得力があります。

●ある障がい者との出会い
竹ノ内さんは1964年に結婚した時、義父宅には血縁のない障がい者1名がいて、新婚でありながら他人がいる共同生活を経験されています。
2人の子育てをしていた30代には児童心理学を学び、「親の感情が子供の発達にどう影響するか」を研究。
3人目のお子さんを妊娠中に、自身の脚に癌がみつかります。絶望の中、何度かの手術を経て回復しています。
1980年には世田谷区の婦人大学に主婦として学ぶ学生となり、1981年ある勉強会で知り合った障がいを持つ女性が、“仕事がしたい”と言ったことに衝撃を受けたと言います。障がいを持っていても社会への参加意欲、社会とつながることへの希望があることを知ったのです。竹ノ内さんはきっと『この問題は私が解決しよう』と感じたに違いありません。専業主婦が障がい者と出会ったことから、藍工房の歴史の扉が開かれたのです。

●藍工房設立(1983年)
藍染めとの出会いは偶然でした。障がい者の仕事には日本の伝統工芸にしようとは決めた中で、亡き兄のお墓参りの際に、たまたま藍染め工房のパンフレットを目にします。すぐに訪問、そこでの人との出会いに惹かれて藍染めに決めるのです。藍染めは、そう簡単に習得できるものではありませんが、日本の文化伝承の担い手になる覚悟もって取り組みました。

1983年、6畳一間を借りて藍工房がスタートします。
その後、ニューヨークカーネギーホール舞台衣装の制作(1985)、パリで藍工房展(1986)、藍工房アメリカ設立(1988)など、障がい者の活躍の場を広げるために竹ノ内さんの精力的な活動・周りを巻き込む力が発揮され続けていました。厳しい資金難にもかかわらず多くの道を切り開いていきました。
2003年10月 藍工房は社会福祉法人を取得します。

●最後に
竹ノ内睦子さんの人生は多くの人を惹きつけ、聞くものの心にまっすぐとどくその語り口は今も記憶深くにあります。今は大野理事長へ変わり、過去を継承しながら新しい社会福祉法人藍の道を歩んでいます。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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