役員報酬の決め方
日経新聞デジタル版、6月11日の記事に「日本企業の役員報酬、前年比5%増の1億1千万円超 透明性など課題」との記事がありました。記事の元となったデロイトトーマツグループの「役員報酬サーベイ(2024年度版)によると、CEO・社長の報酬総額水準は中央値で前年比+5.4%だとのことです。厚労省の発表によれば、2024年春闘の賃上げ率は、5.33%であることからすると、概ね社員の賃上げ率に比例しているといえます。一方で、具体的数字で表わすと、CEO・社長の報酬総額水準の中央値が1億1324万円です。年代別社員の50代平均賃金は607万円です。企業規模が違うので一概には言えませんが、単純比率で役員報酬は約18倍となります。
坂本光司先生は、一般の社員が1日8時間240日働く、つまり1920時間働いているのに対して、社長は24時間経営を考え休むことなく又責任も重いことから1日24時間360日働いている評価して、8760時間であり、社長は社員の4.5倍働くのであるから、社長の報酬は社員の給与の4.5倍にとどめるべきだと説きます。もとより社長も夜は眠るでしょうから、7時間睡眠で365日の2520時間は、重い経営責任の対価であると考えれば、社長は社員の年収分以上を責任の対価として受領しているということになります。
4.5倍であるとすると、社員の平均賃金が607万円であれば、役員報酬は2731万円程度になります。妥当な金額ではないでしょうか。中小企業では、なかなかこの役員報酬に届かないのではないでしょうか。
「役員報酬サーベイ(2024年度版)」を見ていて気になったのは、短期インセンティブ報酬を導入している企業が全体で74.7%、プライム上場企業で88.1%という点です。
短期インセンティブの指標をどこに置くかにより、意味合いは変ってきます。社員満足度や顧客満足度を指標におくインセンティブであればいいと思いますが、多くのインセンティブは売上げや経常利益などの経済的利益が指標になっているばずです。
社長は自分自身が1人で働いているわけではありません。多くの社員が働いてくれることによって、始めて会社に利益が生じるのです。それにもかかわらず社長の役員報酬がその利益を基準として上がるというのはおかしな話です。インセンティブはブラック企業と親和性が高いです。社員個人のモチベーションを上げるためにインセンティブを導入することは分からないではないですが、社長の報酬にインセンティブが付くという制度設計はいかがなものでしょうか。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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