No369記憶に残る言葉【有限会社珈琲館(パスタガーデン珈琲館);紫村公文社長】
今回は2012年10月に坂本先生の授業の一環としてご訪問した『パスタガーデン珈琲館』さんをご紹介致します。
当日はオーナーの紫村公文社長にお話を伺いました。
紫村オーナーは、ある書店で坂本光司先生の『日本でいちばん大切にしたい会社』を手にとり、車で帰宅中にもかかわらず早く読みたい気持ちから、道ばたに車を止めて一気に読んだと打ち明けてくれました。先生が示す“5人の幸せ”や“損得ではなく善悪”について紫村オーナーの考えとぴったりだったことから、感動のあまり巻末に記載されている坂本先生のご自宅にすぐさまお電話をされています。電話に出られた女性(先生のお母さま)から“明日朝6時30分ならいます”という言葉を聞き、翌朝お電話したところ坂本先生がすぐ出られたとのことでした。
●概要(当時の情報です)
社名 有限会社珈琲館
本社所在地 宮崎県都城市乙房町2900
代表者 代表取締役社長 紫村 公文(シムラ ヒロフミ)
従業員数 20名
事業内容 パスタガーデン珈琲館 運営、イタリア料理店 星の空 運営
●お父様に助けられた開業への道
紫村オーナーは元サラリーマン。組織の中の自分に悩み続けたと言います。
あるとき、原因は外部ではなく自分自身の内部にあると考えて、お店を持ちたいと思い行動に移します。
5年間、建築会社のアルバイトやタクシー運転手をし、昼夜を問わずにほぼ働き続けて資金を貯めます。
開業には数百万足りなかったため信用金庫に融資のお願いに行きました。たまたま融資の担当者がお父様を知っていて、“映画の仕事をしていたお父様は良い人だった”というご縁で400万円融資してくれたそうです。現在ではおそらくありえないようなお話ではないでしょうか。
お父様は仕事において集金をしなかったと言います。“支払いに来ないのはお金がないから来ることができない”と考えたからでした。“お金ができれば払いに来る”と考え、敢えて集金には行かなかったのです。原因は支払いをしない・できない本人にあるわけですが、集金をすることで、ともすればその人を追い詰めたり生活への悪影響が発生しうることを考えると、お父様は世の中の経済ルールや自利ではなく信頼を大切にしていたという事が伝わってきます。お父様は仕事には厳しくも、社員は解雇しなかったそうです。そのお父様は紫村オーナーが高校1年生の時に亡くなっています。
●開業の頃
約40年前、地元の宮崎県都城市で珈琲館を開店しました。
開店当時はかなり繁盛しましたが、その後接客サービスが低下します。
オーナー自身もお店をアルバイトに任せるなど、現場を離れがちになっていきました。お店の売上が2000円しかない日もあったそうです。お母様の隠れた補助があったから存続できていたようです。
●忘れられない出来事
約20年前、顧客クレームがあった時、“アルバイトなので”と言い訳をしたところ、そのお客様から“オーナーであるあなたに責任がある”と指摘されました。その通りであり、紫村オーナーはお店を友人に譲ろうとまで考えましたが、自分自身が変わることだと考え、気持ちを入れ替えたと言います。弟や回りの人に対して敬語を使うようにし、相手を尊重して、笑顔を心がけるようにしました。
ほどなく珈琲店からパスタ料理店に転換します。その際、地元のテレビで紹介されたことも重なってお店は繁盛していきました。
評判だったドレッシングの商品化を目指し、食べ歩きを重ね手づくりにこだわった生ドレッシング事業を始めます。地元のスーパーで売れ始め、2年後には苦労の末に鹿児島の老舗デパートとの取引が叶います。ご訪問当時では同社のドレッシングは某ネット通販で常に上位となっていました。
●理念
お店のテーマは『感動を与える』。
オーナーが笑顔になることでスタッフに良い影響が出始めます。そしてスタッフの笑顔の接客が定着していきます。
『やればできる朝礼』が理念共有の場です。今回の訪問では朝礼に参加させていただきました。全員で円になり元気よく行います。今日一日のはじめに全員の気持ちが繋がっていく感覚を覚えました。全員が相互に元気を与えあう朝礼です。
朝礼の最後に全員でハイタッチを行います。アドレナリンがでてくるような、体の細胞が活性化するような感覚になります。
理念の共有や浸透が日々レストランのスタッフ全員で自然と行われていました。
●最後に
冒頭に記載した、紫村オーナーが坂本先生の『日本でいちばん大切にしたい会社』に出会った際の出来事をを伺った時、“本の力”を感じたと同時に、ある種の物事は必然のようにつながっていく力を持っていることを実感しました。そして紫村さんのような行動に移す人が世の中を変えていくのだと思いました。
***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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