No370記憶に残る言葉【社会福祉法人こころみ学園(有限会社ココ・ファーム・ワイナリー);笹井正治氏】

今回は2012年、2015年に坂本ゼミとしてご訪問した『こころみ学園とココ・ファーム・ワイナリー』さんをご紹介致します。
2回ともにこころみ学園の事務局長であり、ココ・ファーム・ワイナリーの総合事業部長でもある笹井正治氏にお話を伺いました。(役職は2012年のお名刺より)

 https://www.cocoromi.or.jp/

 https://cocowine.com/

●概要(当時の情報より)
①社会福祉法人 こころみる会
住所  栃木県足利市田島町616
設立  1969年(昭和44年)
従業員数  123名
代表者  理事長 池上 知恵子
事業内容
・障害者支援施設『こころみ学園』(施設入所支援90名・生活介護105名・短期入所10名)
・多機能型事務所(生活介護・就労継続支援B型)『あかまつ作業所』(生活介護10名・就労継続支援B型10名)
・共同生活援助事業所『あけぼの荘・三井荘・うちこし荘・あさひ荘・たじま荘・もちぶね荘・小松荘』(7ホーム30名)
・相談支援事業所『こころみ』(特定および障害児相談支援事業)

②有限会社ココ・ファーム・ワイナリー
住所  栃木県足利市田島町611
設立  1980年(昭和55年)2月19日
従業員数 31名
事業内容  ワイン製造販売
最初のヴィンテージ  1984年
役員  代表取締役 長谷川 翼
資本金 4,000万円

●中学校の特殊学級の生徒たちから始まった開墾
1958年、中学校の特殊学級の先生であった川田昇氏が、山林をブドウ畑として生徒たちと開墾したことが始まりです。
“この子たちに格好良いことをさせたい”
斜面の平均勾配は38度。現在在籍している80才くらいの人達が開墾しました。

●有限会社ココ・ファーム・ワイナリー設立のきっかけは税務署の指摘から
1969年、川田昇氏が中学校の教員を辞め「こころみ学園」開園。初代園長として就任されます。
1980年、有限会社ココ・ファーム・ワイナリー設立。(資本金2000万円)
当初は「こころみ学園」としてワイン作りを目指しましたが、税務署から『補助金対象であるこころみ学園が、酒税を納めることになることは問題』と指摘され酒造免許を断念。
しかし父兄の賛同をえて有限会社樺崎産業(のちのココ・ファーム・ワイナリー)を設立し、酒造免許を取得。1980年にワイン作りが開始されました。

●こころみ学園の取り組み
主な活動はブドウ栽培とシイタケ栽培です。
・ブドウはワイン用に4種類あります。
山の斜面でのぶどう栽培は想像以上に苛酷な作業です。夏場の草むしりはきりがない作業と言い、多くの手仕事の象徴です。
同社では16万本のワインを生産していますが、約3万本は急斜面を中心とした足利市で栽培したぶどうを使用しています。そのほかは全国の契約農家に生産を委託していました。
・シイタケを1万本栽培しています。
くぬぎ原木を切って運び、菌を入れ、原木に刺激を与えるなどの作業をしています。数年前は10万本でしたが、東日本大震災による福島原発の放射線汚染のために出荷停止を余儀なくされました。

●有限会社ココ・ファーム・ワイナリーの取り組み
こころみ学園で栽培したブドウとシイタケを商品化して販売する部門です。
ワイン作りはここから始まります。ワインになるまでには長い工程があります。ホームページにはワインつくりに関することや、一般のワインメーカーであれば公表していないような酸化防止剤に関する情報など記載されていて同社の誠実な姿勢が伝わり共感を覚えます。
ご訪問の頃の売上は5~6億円でした。その内ワインが占める売上は60%です。

●障がい者の活躍する例
・ワインの検品 コルクを圧縮して栓を閉める製造ライン工場はかなりのスピードです。コルクのカスが中に入ってしまう場合がありますが、ある障がい者はその研ぎ澄まされた視覚でワインに混入されたコルクに気づくのです。
・洗濯を担当するある障がい者は、約100人分の洗濯物を、誰一人間違わずに本人に渡すのです。名前は書いてあるものの間違えない正確さを誇っています。
恐らく私たちの想像を超える能力を多くの皆さんが日常的に発揮している、そんな非日常を感じたご訪問でした。

●最後に
毎年開催される恒例イベント“収穫祭”には2万人もの来場があります。2018年の時点では35回目。収穫祭は関わる人達がゼロから育てたイベントです。
現在は事前予約制になっていて、2日間の収穫祭は1万人ほどの規模のようです。JTBツアーの企画もあり充実とした運営がされているようです。

***補足***
この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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