IT業界の障がい者雇用について

経営人財塾7期生の、大興電子通信株式会社改めDAiKO XTECH株式会社(ダイコウクロステック)の服部泰隆です。

1974年より「大興電子通信」として、多くのお客様に支えられてまいりましたが、当社の提供するサービスが「電子」「通信」だけでは表現できなくなったため、本年4月より「DAiKO XTECH株式会社」と社名を変更いたしました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回私が担当するブログのテーマは、「IT業界における障がい者雇用について」です。

DAiKO XTECHでも障がい者雇用を行っており、法定障がい者雇用率を遵守しています。現在、DAiKOで働いていただいている障がい者の方の多くは、埼玉県にあるDAiKOが運営する「青空農園」で、野菜などの栽培に携わっていただいています。

しかし、「もっと考えないといけないのではないか」と思うきっかけが、昨夏にありました。
私は経営人財塾7期生として、昨夏の合宿に参加し、九州地方の企業視察を行いました。この視察の中で、「障がい者雇用」という観点から、大きな衝撃を受けました。

最初に訪れたのは、博多にあるATUホールディングスさんです。ここでは、障がいを持つ方が警備の仕事をされています。率直に言って、障がい者の方が警備の仕事に従事していることに、私は驚きました。同社の岩崎社長にお話を伺ったところ、障がい者の方々への仕事の教育で最も大切にしていることは、「視線を合わせること」だそうです。これは「目の高さを合わせるだけでなく、相手と同じ高さ、同じ方向を向き、同じ景色を共有すること」を意味すると教えていただきました。

次に訪問したのは、小倉にある陽和さんです。ここでは、障がいを持つ方が大きな機械を操作し、プラスチック精密加工を行っています。驚いたのは、その方が補助や介助なしに、一人で黙々と作業をこなしていることです。その方の教育を担当したグループリーダーに話を伺うと、「正直、ここまでできるようになるには時間も手間もかかりました。でも、やればできるんですよ」とおっしゃっていました。実際には、教育の過程でさまざまな方法を試し、「このやり方はどうだろう?楽しそう?つらそう?興味がありそう?覚えられそう?」と本人の反応を見ながら、「じゃあ、このやり方でやってみよう」と、本人と真摯に向き合いながら、障がいのある方がいきいきと働けるようサポートされていました。さらに、「彼らだって、なんでもできるんですよ。障がい者の限界を健常者の勝手な思い込みで決めてはいけないんですよ」と語っておられたのが、この言葉は、今でも私の胸に深く刻まれています。

3社目は、博多にある障がい者つくし更生会さんです。この会社は、福岡県大野城市のプラントと契約し、廃棄物リサイクルを行っており、法定障がい者雇用率100%を達成しています。プラントの各所で、障がいを持つ方々が活躍されていました。

私たちがプラント内を見学している際、第二選別班の関さんという方がプラントの説明をしてくださいました。その際、ラインを一時停止し、関さんがパネルを使って、一つひとつ丁寧に「どのような選別を行っているか」「どのような問題が起きるのか」などを説明してくださいました。関さんは精神障がいをお持ちとのことでしたが、パニックになることもなく、しっかりと、わかりやすく説明されていました。

印象的だったのは、その周囲の作業員の皆さんの様子です。皆、手を止めて、関さんのことを見つめていました。私は最初、「関さんの役割が次回自分に回ってくるため、皆が学んでいるのだ」と勘違いしていました。しかし、見学終了後に那波専務に尋ねたところ、「あれは、みんなで関君のことを応援しているんですよ。“説明、頑張れ!”って」とのこと。その答えを聞いた瞬間、その純粋さ、仲間への想いに、胸が熱くなりました。

4社目は、鹿児島にあるラグーナ出版さんです。この会社では本の出版を行っており、精神障がいを持つ方々が、校正・校閲・製本などの仕事に取り組まれています。何百ページにもわたる本の校正や校閲を丁寧に行っています。おり、実際に皆さんの働く姿を拝見しましたが、目を輝かせて生き生きと働かれていました。

ちなみに、経営人財塾7期生のプロジェクト研究として出版された『なぜこの会社は社員が辞めないのか―39社が教えてくれるその秘訣』も、ラグーナ出版様で出版していただきました。
https://store.lagunapublishing.co.jp/items/98542533

正直なところ、当時の私は「障がいを持つ方に、こんな細かい作業ができるのだろうか?教育はどれほど大変だったのだろうか?」と勝手に思い込んでいました。そんなとき、7期生の一人が川端社長に「このお仕事をしていて一番大変なことは何ですか?」と尋ねた際、川端社長はこう答えました。

「大変なことなんて何にもないですよ。みんなが自立して巣立っていく姿を見るのが、うれしくて、楽しくてしょうがないですよ」。
川端社長の大きな愛を目の当たりにし、私はその場で涙が止まりませんでした。

この5社を訪問し、私は大きな衝撃を受けました。
それまでの障がい者雇用に対する自分の考え方が、間違っていたことに初めて気づいたのです。

IT業界は、
・技術の進歩が速く、覚えるべきことが日々変化する
・専門的な知識が必要で、常に学び続けなければならない
そのため、障がい者の雇用は難しいと考えられてきました。実際、情報通信業界は全業界の中で障がい者雇用の達成率が最も低いという現状があります。

しかし今回の経験を通じて、IT業界でも「愛情を持って、時間をかけて教育し、障がいのある方が楽しみながら働ける場」をつくる必要があると痛感しました。

ATUホールディングスさんで学んだ「同じ視線になる」という姿勢。
陽和さんで聞いた「障がい者の限界を健常者が勝手に決めてはいけない」という視点。
つくし更生会さんで見た「助け合う、応援する」文化。
ラグーナ出版さんで触れた「大きな愛」。

これらの教訓を胸に、私たちIT業界でも、障がいのある方々の自立を支援する取り組みを真剣に考えなければなりません。これは、業界全体で取り組むべき大きな課題だと強く感じています。

経営人財塾7期生
DAiKO XTECH株式会社
服部泰隆

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