素直さの正体
よく経営者の方に採用したい社員はどんな社員かと尋ねると、「素直な人」という答えが一番多いと思います。私もそう思います。
しかし、この経営者が話してくれる「素直さ」には、単に人の言うことを聞くという以上の意味が込められているように思います。
野球の話で恐縮ですが、日本球界初のトレーニングコーチとしてジャイアンツに入団した鈴木章介さんの話しです。
1965年、川上監督は選手の肉体変革が必要と考え、オリンピック東京大会に陸上十種競技の選手として出場した鈴木章介さんをトレーニングコーチとして招致したそうですが、それまで鈴木さんは野球をやったこともなかったそうです。
その鈴木氏がトレーニングコーチとして最初に取り組んだのが、30分~40分の集団走でした。しかし当時のプロ野球選手は、走り込みなどしたことはなく、野球もしらない鈴木さんに批判的だったそうです。「俺らはオリンピックに出る選手じゃないんだから、走り込む必要はない。」そんな反応だったそうです。
ただその中で二人だけ、鈴木さんにしたがって走った選手がいました。その選手が長嶋茂雄さんと王貞治さんです。二人が懸命に走る姿をみて、他の選手も一緒に集団走をするようになったそうです。
このエピソードを聞いた際、素直な気持ちをもつ人だからこそ一流になれるが、ただ素直であればいいというわけではないと思いました。
当時、野球のトレーニングに走り込みは不必要と思われていました。一方で、川上監督は、既存にやり方ではない方法で選手の肉体改革が必要だと考えていました。長嶋さんも王さんも、きっと集団走の真意を見抜いていたのではないでしょうか。今では野球選手にとって走り込みは必要不可欠だと言われています。
素直さは大切です。ただ、単に人のいうことを聞くというレベルでは成長はできません。相手の言うことの真意を見極め、納得した上で行動して初めて人は成長できるのだと思います。
素直さの正体は、相手の言うことの真意を見極め、行動に移せる能力だと思うのです。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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