「人を大切にする心がつくる製品」

大阪府堺市で生産設備の設計・製作をオーダーメイドで行っている、有限会社関西貿易 代表取締役の森 勲と申します。経営人財塾7期生として1年間学ばせていただきましたが、この経験は人生において大きな出来事の一つとなりました。
坂本光司先生とは、堺市が運営する「中小企業経営学舎」という学びの場で出会いました。6期生の案内をいただき応募したものの、定員オーバーで入塾できませんでした。そのとき先生から「また来年応募してください」とお声をかけていただきましたが、1年後にはそのことをすっかり忘れてしまっていたのです。
ところが、ちょうど1年後、坂本先生から直接お電話をいただき「7期生の応募はどうしますか? 君のために1枠空けているけど」と言っていただきました。そのお言葉に断る理由などなく、即座に入塾の返事をしました。私の口約束を1年後まで覚えていてくださったことに深く感動し、多くの方が先生を慕う理由がよく分かりました。人財塾にはそんな温かい人柄に惹かれた同志が集まり、人を大切にする意味を肌で感じることができました。
製造業で製品を作っていると、人の心が製品に宿ると感じる瞬間があります。
約10年前、私はエンジン搬送ラインの反転機を受注しました。しかし予想以上に難易度が高く、納期に間に合わず、視察に訪れたお客様の役員の前で歯抜け状態の設備を見せることになってしまいました。担当者からは「もうかばいきれません」との連絡が入り、1か月後の視察に間に合わなければ損害賠償請求を行うとのメールも届きました。
試算すると、1週間の遅れで会社は債務超過に陥り倒産する状況…。半ば諦めかけながらも「最後までやりきる」という思いで、毎日徹夜が続きました。唯一早く帰宅できた夜、泣きながら風呂に入ったことを今でも覚えています。
そんな中、社員たちは愚痴ひとつ言わず、お客様のために一心不乱に働いてくれました。視察の3日前に奇跡的に完成し、据付工事へ。出荷の日、全員で朝礼後に心を込めて見送りました。「頑張ってね」「お客様のためにいい仕事をしてね」という言葉が飛び交い、まるで大切な人を送り出すような光景は感動的でした。
突貫工事だったため、その後のクレームは覚悟していましたが、この10年間一度も不具合はなく、お客様の大切なエンジンを作り続けてくれました。そして今では「よく働く設備」として良い意味で有名になりました。
先月、その設備は工場移転のため解体されることになり、その工事を当社が受注。さらに、お客様の研修センターで社員教育用として再利用されることが決まったのです。 人を大切にする経営学会で学んだことは、物事から多くを感じ取れる力を養うということです。そして、心を込めることが、長く愛される仕事につながると実感しています。

人財塾7期生
有限会社 関西貿易
森  勲

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