言葉の共通理解
言葉は、お互いのコミュニケーションにとって、なくてはならないツールですが、時のこの言葉のせいで行き違いが生じ、人間関係が悪くなってしまうことがあります。
私たちは、言葉を使うとき、相手も同じ意味として使っていると思ってしまいます。 しかしよく確かめてみないと同じ言葉の意味に使っているとは限りません。
例えば、「人を大切にする」という時の「大切」とは何を意味するのか、具体的に考えると難しかったりします。
ある人にとっては、人を何よりも重んずることだと捉えていたり、人の言うことを何でも聞くことだと考えたり、あまりいないとは思いますが、中には人を甘やかせることだと考える人がいるかもしれません。しかし、これらは同じ「大切」から発想していても全く異なる意味になってしまいます。
この点で、まず知るという意味では、辞典や事典が役に立ちます。
「人を大切にする経営学用語事典」では、「人を大切にする経営」とは、「人間本意の経営」あるいは「人間を経営の中軸に据えた経営」のことであると定義されています。先の「人を何よりも重んずること」と同じ意味だと思います。
では重んずるとはどういうことか。これは「いちばん大切にすべきことをいちばん大切にする経営」に書かれています。企業経営でいちばん大切なことは、社員やその家族をはじめとした関係する人々の幸せの追求・実現であると定義されています。
つまり人を大切にするとは、人を中軸に据え、関わる人々の幸せの追求・実現をすることである、と言う意味になります。
決して、社員のわがままを聞くことでも、社員に甘いことでもありません。一人の人のわがままは他の関わる人の幸せ追求に反することもありますし、その結果、本人の幸せの追求に反することにもなってしまいます。人を大切にすることと、人に厳しくすることは両立する場合もあるのです。
次に意味が分かったとしても、それを実践することとは一定の距離があります。どう実践すればいいか分からないこともあると思います。そんな時に必要なことは、具体例を共有することです。
人を大切にする経営を実践されている会社では、朝礼等で経営理念等を唱和した後、社員が経営理念の具体的実践を報告する機会を設定しているところがあります。単にことばのみを覚えるのではなく、その言葉の意味することを行動した場合には、それを社員全員で共有することは、その言葉の意味を具体的に理解する上でとても大切なことだと思います。
言葉の共通理解は、このような日々の実践で作られていくのだと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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