「ライフデザイン経営」に思う

経済産業省は、2025年8月、ライフデザイン経営を提唱し始めました。

ライフデザイン経営とは、「社員がキャリアとライフを両立し、充実したライフデザインを実現できる環境を提供することで、人材の能力を最大限引き出し、企業価値向上につなげる経営のあり方」ということです。自由に使える時間の確保に質する家事支援サービスや、キャリアとライフの両立に質する情報提供等を行うライフデザインサービスを企業が取り入れることを勧めています。

ライフデザインサービスや家事支援サービスに関するホームページまで出来ています。

 このような視点を経営者に提供し、経営者が社員のことを考えることはいいことだと思いますし、このようなツールが約に立つという面もあるかと思います。

 しかしこれはあくまでHOW-TOです。

 仕組みだけを導入したからといって社員が安心、幸せに仕事ができるということではないと思うのです。

 たとえば家事支援についても、未だに家事は女性がするものという男性は多くいます(私は家事をしてこず、現在意識改革中ですので、あまり偉そうなことはいえないのですが)。そもそも在り方自体を変えていかなければ、ライフデザイン経営が目指す社員のウェルビーイングが実現しないと思うのです。

 日経新聞デジタル版では、2025年10月26日、「働き方改革やりすぎもNG?経産省が提唱、ライフデザイン経営とは」との記事の中で、「ワークライフバランス重視の姿勢が行き過ぎている面もある」として「働く人たちの『今はもう少し働ける』という気持が伝わっていない」として「働きたい改革」も必要であるとの論旨を展開しています。

 この論調から見れば、家事支援等を利用してライフの負担を軽減し、その分をワークに充てるべきといっているように見えてしまいます。

 またライフデザインサービスも企業がコミットすることで、企業が縛り付けるための道具として悪用されるおそれもあります。

 個人のライフは、人それぞれに価値観があります。家事を大切に思う人や家事をしたい人もいるかもしれません。また自分のライフデザインは、自分自身で決めたいと思う人もいるでしょう。

どこまで企業が立入るかについては、慎重に判断するべきだと思います。

そして何よりも、真摯に社員のことを思う在り方があって初めて有効に活用できる手段となるのだと思うのです。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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