就活は「やり方」よりも「あり方」③2015年の日本理科学工業
2015年に法政大学大学院坂本光司ゼミに社会人として入学しました。 多くの企業を先生と一緒に視察に行き、この会社が最も印象に残っています。
日本理科学工業。
法政大学大学院の教室で50人の社会人院生に、坂本先生はこの話をしてくれました。 「なぜ、社員の方々は自信に満ちた生き生きとした顔をしているのですか?」 大山泰弘社長はこう答えました。 「自分も社会に貢献しているんだ、という思いがあるからでしょう。 社会に役立っている自負が、社員のモチベーションを高めています」
最初に障がい者雇用を実践した1959年の話を伺っていると、老いた女性社員がコーヒーを運んで来てくれました。実はその女性が当事者の女性で、50年経って65歳の障がい者が働き続けていることに、坂本先生はビックリしたと言います。しかもそのお母様も90歳を超えて健在なのです。障がい者の娘が社会で生きて行けるのか心配だったお母様も、子供の幸せを一心に念じ、自分も幸福に生きている。2度ビックリしたと言います。
ある農業経営者の集まりで、役所が主催し日本理科学工業の視察に同伴した話です。 バスでの移動で渋滞と下調べ不足により、午前10時到着が11時15分になってしまった。 坂本先生は、このままでは社員食堂も兼ねている会議室が塞がれ、社員が昼食を取れないことを危惧し、バスの中で講演してもらうことを決断しました。 ところが大山社長は、社員には説明済みで、昼食時間を1時間遅らすことで承知してもらったと説明されます。坂本先生は、それはひどすぎるので通常通り昼食を取れるように戻してくださいと訴えます。それでも大山社長は、再度変更することで社員が混乱するので食堂でやりましょう、と食堂を使いことになりました。 講演後の工場見学で移動した時に交わされた社員の声を先生は聞き逃さなかったのです。 「今日はお昼が1時間遅くなって、お腹が空いちゃうよね」 ランチ時間を楽しみにして一生懸命に働いている社員の楽しみを自分たちが奪ってしまった。 坂本先生は耐え切れずトイレに駆け込み涙を流しました。 誰が悪いわけでもないが、あまりにも申し訳なく、あまりにも恥ずかしい。 帰りのバスの中で、坂本先生は全員を大声で𠮟りつけたといいます。 坂本先生の激怒を、教室の学生も浴びることになり、今も忘れることができません。 (人を大切にする経営学会:根本幸治)


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