下請法から取適法へ(取適法で社員を守る)①

 来年(2026年)1月1日より、下請法が改正され、新たに「中小受託取引適正化法」(取適法)が施行されます。

 今まで使用されていた「下請」という言葉がなくなり、「受託事業者」となります。

 この受託事業者は、中小企業だけでなく、フリーランス(個人)も含みますが、フリーランスには、フリーランス法の方が優先されます。

 いくつか大きな変更がありますが、まず注意をしなければならないことは、取適法の適用対象が、下請法の時よりも拡大されることです。

 まず製造委託、修理委託、情報成果物作成委託(プログラム)、役務提供委託(運送、倉庫保管、情報処理等)、特定運送委託については、これまで次のような関係の場合にのみ、下請法の適用がありました。

① 委託事業者(元請)資本金3億円超 

受託事業者(下請)資本金3億円以下

② 委託事業者(元請)資本金1,000万円超~3億円以下 

受託事業者(下請)資本金1,000万円以下

 このように資本金を基準とされていましたので、適用対象となるかどうかは、会社の謄本を見れば分かる状況でした。

 ところが今回の改正法により従業員基準が加わりました。

③ 委託事業者 常時使用従業員300人超

  受託事業者 常時使用従業員300人以下

④ 委託事業者 常時使用従業員100人超

  受託事業者 常時使用従業員100人以下

 つまり資本金が1,000万円以下(1,000万円も含みます)の会社はこれまで委託事業者(元請)になることはありませんでしたが、このような資本金の会社で会っても、自社の正規社員が100人を超える場合には、受託事業者(相手)の会社が正規社員100名以下であれば、取適法が適用されることになります。

 しかし従業員数は、簡単には分かりません。また会社によっては、大きな増減が生じる場合もあります。特に100名前後の会社は委託事業者としても受託事業者としても取適法が適用されるかどうかが正規社員数により変ってしまうということになります。

 つまり正規社員数の要件については、自社及び取引先の正規社員数を常時確認する必要があります。

 このような場合に備えて、業務委託の基本契約書等において、「社員数に変動がある場合は、相手方に通知しなければなりません。」等の条項を入れておくことが一つの対応策となります。

 もとより人を大切にする経営では、社外社員とその家族も大切にするため、このような適用の範囲に関係なく、自らが委託事業者になった際には、取適法に反する行為をしないようにしていると思いますが、一方で自社が受託事業者として委託事業者より理不尽な要求を求められた際には、取適法は社員を守る法律となります。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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