「私は給料は1円もいりません」=京丸園株式会社
浜松市の郊外に、京丸園株式会社という農業による第六次産業の会社があります。
代表の鈴木さんが、新聞に「社員募集」の折込チラシを出すと、それを持参した二人の女性が会社に来られました。
「娘は農業が好きです。きっとお役に立てます。どうか採用してください」
鈴木さんはびっくりしました。
家族以外のはじめての社員の募集として、屈強な若者が来ることを期待していました。
その女の子は20歳前後ですが、知的障害のある女性でした。 「農業は力仕事です。娘さんには無理だと思います。他に当たってくれませんか」
鈴木さんは失礼にならないよう気を使って、丁重にお断りしました。
「娘は頑張り屋さんです。どうか採用ください。 もしも大変というなら、私も朝から晩まで、娘と一緒に働きます。 私は給料は1円もいりません」
「すいませんが、他を探してください」
鈴木さんは、無償で働くと言う母親の言葉に驚きました。
「わかりました」 お母さんは悲しい表情で肩を落とし、娘さんの手を引いて、田んぼ道を帰っていきます。
トボトボと帰る二人の後ろ姿を、鈴木さんは見つめていましたが、
「お母さ~ん、娘さんを採用しますよ。明日から寄越してください」
母親は何度も何度も頭を下げ、隣の娘さんを抱きしめ、涙をぬぐって帰っていきました。
京丸園はこれを機に障がい者採用を続け、業績を右肩上がりに伸ばします。
「もしもこの子の採用を断っていたならば、今のわが社はありません」
「感動が人を変える」坂本光司著2022年より抜粋 (人を大切にする経営学会:根本幸治)

コメントを残す