鎌倉

野口具秋です。

鎌倉の駅に降り立ったのは初めてある。江の電の鎌倉駅が隣接している。1975年、日本テレビ、青春ドラマ中村雅俊主演の「俺たちの旅」の舞台となった湘南である。若人の青春像、日々の悩み、将来の夢を友情で織なすドラマであった。小椋桂作曲、中村雅俊の主題歌「おれたちの旅」を思わず口ずさみながら改札口に降り立った。懐かしい遥か遠い自分の青春時代を重ね合わせ、しばらく街の風景に見入っていた。

坂本先生の著書「日本でいちばん大切にしたい会社」に感動を受けた若い起業家たちのオフィスは閑静な住宅地の奥まった所に80年は経過していると説明のあった古屋は、静かに冷たい雨の中に佇んでいた。敷地の奥に続く庭は改装中の真っただ中にあり、寂しげに春待つように木立や草花は雨に打たれたままである。裏庭は竹藪に囲まれリスやタヌキの珍客が度々顔を見せるのだそうだ。

案内された会議室は座敷であった。歩くとギシギシと音を立てていた。懐かしい庭を見渡せる縁側傍に席をいただく。昔ながらのガラス戸はゆがみ隙間が生じている。その隙間から庭の様子が見てとれる。

若い起業家の夢の語らいは、理整然と熱く、時には冷静に静かに続く。決して奢り高ぶった自己欺瞞に満ちた様子は微塵もない。己に重ね合わせ、この若い起業家たちの優しさと穏やかさはどこから来るのだろうか。

古い家屋に再び命を吹き込み、古都鎌倉に溶け込んで、大切なものは何か、社会にとって大切な企業とは何かを懸命に考え続けていきたいとの思いを追い続ける彼らの青春像をお土産に雨上がりの道を鎌倉駅に向った。

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