商業界前主幹、倉本初夫の三回忌

「さらば価格競争」を出版させていただいた商業界の笹井編集長の1年前の昨日のブログから

昨日12月15日は、商業界前主幹、倉本初夫の三回忌でした。

倉本は、商業界創立者である父・長治の志を継ぎ、日本商業の健全な発展、つまりお客のためにある商いの育成に努めました。

享年90歳、その直前まで執筆・講演活動にのぞみ、雑誌「商業界」にも毎月、巻頭言を執筆していました。

その担当編集者としてあたる毎月のやりとりから、わたしは多くを学ばせていただきました。

その一つ、2014年12月号に掲載した一文「量から質へ」を紹介します。

大量陳列という売り方がひところ盛んで、メーカーなどが店頭の陳列コンクールで賞を競わせた時代がありました。スーパーでは今でも棚陳列の位置や間口に関心が高いのはそれなりの理由があるからでしょう。

生活者の所得の厳しさが増し、店舗間の競合も激しい昨今、低価格競争はこれからも規模の問題もからんで、一層深刻になると予想されます。しかし、一方では人口構成の大きな変化や、食品ばかりではなく、あらゆる商品に対する消費への情報と個性の多様化が急速に広がり始めていることも放置することができないようになってきました。

TPPがどのように決着するにしても、価格もさることながら質に対する評価が、購買を大きく左右する条件になる時代が近づいていることは間違いありません。産地についての選択が生鮮食品にまで及んできたことは、陳列の表示を見ても分かりますし、法にも反映してきています。もちろん消費者の念頭にもあります。

価格競争の渦の中に巻き込まれてしまうと、つい二の次になりそうな個々の商品の質が、実は「買うか、買うまいか」と商品をじっと見つめているお客さまの頭の中での第一条件にまでなっていることを見失ってしまうのではないでしょうか。そこにはもちろん価格とのバランスも含まれてはいますが、自分にとって気に入る割合がどうなのかは、実はお客さま一人ひとりまったく異なるのです。

そこに売り手のプロである店側の情報提供の余地があります。

最近のあるCMに「好きなものは、みんな違うのです」というのがありました。いま、量の問題、特に価格にからんでは消費税率引き上げ間近かということもあって、お客さまもかなり神経質になっています。

しかし、「好み」というよりも、人間として、生活を真剣に考える当然のこととして、これからの商品やサービスに「質とは何か」を売り手としても、つっこんで考え、不足した分野を強化することが、差別化の重要なポイントのひとつになってきたことを、年末の提言にしたいと思います。

いかがでしょうか。

量から質の時代ということに加え、

・「個」の時代の到来

・プロとしての情報提供の重要性

・そもそも質とは何か

といったヒントを提示してくれています。

これらは、いまも重要なテーマです。

それぞれの立場、視点から考えてみてください。

そこに道は開かれるでしょう。

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