学歴は「学んだ歴史」 学会は「学ぶ人の会」

毎週金曜日に「人を大切にする経営学会」の会員に送るメルマガの本日の巻頭言です。
学会の入会には学歴は関係ありません。

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学歴は「学んだ歴史」 学会は「学ぶ人の会」
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人を大切にする経営学会 理事 事務局次長 藤井 正隆
                  株式会社イマージョン 代表取締役社長

新年あけましておめでとうございます。事務局の藤井です。
元旦の坂本会長の次になりますが、たまたまの巡り合わせです。また、
執筆回数が多いのは、執筆者の急なご病気などのピンチヒッターとして
担当することがあるためです。
事務局の事情をお察し下さい。

さて、人を大切にする経営学会の設立は2014年9月ですから、早いもので既に
2年4ヶ月が経ちました。順調に会員数が増え、現在、団体会員154社(5名登録
可能)、個人会員605名、学生会員46名と、延べ人数では、1500名程度になっています。
これは、学会員の方からのご紹介やご推薦によるものがほとんどです。
改めて、心より御礼申し上げます。

さて、事務局を担当していると、本当に様々な電話やメールが入ります。
その中で、設立当初から決して少なくないのが
「私は、大学出ていないで高校卒業なんですが、大丈夫でしょうか?」
といった問合せです。学会といった響きに、大学の教授先生の集まりといった
イメージがあるからだと思います。

私は、基本的に次のように応えます。
「当学会の坂本会長は、『人を大切にする経営学会は、学者の会ではなく
学ぶ人の会である』と、普段からおっしゃっていますのでご安心下さい。
思いがある人は大歓迎です。是非、一緒に学びましょう。」

時代背景の中で、経済的な要因等で、中学、高校しか出ていない方の中には、
素晴らしい経営者も数多くいます。いつも不思議に思うのは、大学試験で、
スポーツ選手には特別枠があるのに、なぜ、経営者には無いのかです。
少なくとも、長年に渡って実績を上げてこられた経営者は、机の上では
到底学ぶことができない経験知を数多くお持ちだからです。

さて、私事で恐縮ですが、私は決してエリートでもなく、むしろ落ちこぼれ
です。高校は進学校に行ったものの、いろいろあって半分位しか行っていません。
今でいう不登校で、小さい頃から母子家庭に育ちながら、今、振り返れば、
随分、親不孝者だったと思います。
やがて、大学を卒業して大手コンサルタント会社に入りますがコンプレックスは
いつも頭の隅にありました。そのため、大学院に行きたいと思い、前職のトップ
に直談判して40歳の時に慶応ビジネススクールに通うことになりました。

有名な教授の授業を受けることができたのはいい経験になりましたが、反面、
違和感もありました。それは、先行研究の論文レビューやケースメソッド等、
自分自身が毎日関わっているビジネスの現実とかけ離れたもののように感じたからです。
また、中には10年前のレクチャーノートかと思われるケースの解説をしている
教授もいてガッカリしたものです。そうした教授は、私同様に企業派遣で来て
いて一緒に学んでいた同期からの鋭い質問に対して応えを窮することも珍しく
ありませんでした。

その中で、出会ったのがマーケティングの重鎮、嶋口充輝教授(現名誉教授)
でした。「思いやりのない、単に、取った取られたといった目的のマーケティ
ングは意味がない」と授業の中で話されたのは衝撃的でした。
こんなことを言っていいのか?のかと、正直ビックリし、ある意味で共感した
ものです。

その後、嶋口先生が慶応から法政に移られました。もう少し学んでみようと
思っていたために、今度は、企業派遣ではなく自分で投資をして法政大学大学院に
通うことにしたのです。

そこで、坂本光司先生との運命的な出会いがありました。2009年です。
坂本先生の授業は、今まで受講してきた経営学とは真逆とも思えるような内容
でした。また、授業で連れて行っていただいた優良企業のすばらしさに魅せられ
ました。そして、取りつかれたように、坂本先生の行かれる企業視察に、
金魚のフンのようにご一緒するようになりました。それは現在も継続しています。

坂本先生とご一緒する機会が多くなり、嶋口先生が言っていた意味が少しずつ
ですが、わかるようになっていきました。
そうこうする内に、後、何年位働けるだろうか、もし、そうであれば・・と
決意して会社に辞表を出し、自分で会社を立ち上げ今に至っています。
6年前の48歳の時で、随分、回り道をした意思決定でした。

昨年の夏に発刊した「『いい会社』のつくり方-人と社会を大切にする経営 10の方法」
(WAVE出版)の中で、私の夢であった坂本先生と嶋口先生の対談が実現
しました。私自身が学んで共感したお二人の対談は秀逸で、私の拙い文章
ではなく、お二人の対談だけで一冊全部でもいいのではないか?と思える位、
素晴らしい内容でした。是非、対談だけでも読んでみて下さい。

さて、冒頭の学会への初期に多かった質問の話に戻りたいと思います。
個人的に考えることは、一般的に、実務家は現場から学び、研究者は書物や
論文から学ぶ傾向があります。(最近は、フィールドに出る教授も増えてきて
いい傾向だと感じます。)
実務家でもあり、学生でもある自分自身の経験から心から思うことは、学者と
実務家どちらが偉い、どちらの理解が深いといった話でなく、経験と役割が
違うだけです。
自然科学の世界は、実験(経験)と理論が一致します。しかし、社会科学の
世界では、実際の経営を行う実務と経営を理論化する研究者が異なるために、
お互いの理解に乖離が生じてしまうことになります。だからこそ、役割の違い
を相互に理解して、一緒に高めていくことといった意識が重要であると思います。

年を重ねてから大学院に入ったわけですが、まだまだ私など小僧です。
坂本ゼミでは、70歳を超える学生も一緒に学んでいます。自分が70歳の時
も学校で学生として学べるだろうか?と想像すると頭が下がります。

 学歴=学んだ歴史 

つまり、70歳でも学び続ける人は、いくつになっても学歴を積んでいる人なのです。
一方、教授や博士の称号があったとしても、10年前のレクチャーノートで授業
をする先生は、学歴が10年前に止まってしまっているのではないでしょうか?

 学会=学ぶ人の会

普段からの坂本会長が言われるように、「人を大切にする経営学会は、まさに
学ぶ人の会」だと思います。個人的な意見ですが、もし学者が中心の会であれば、
当学会の存在価値は薄くなってしまうような気がします。必ずしも学者中心
ではなく、思いがある方であれば、学者も学生も実務家も数多く参加して、
お互いが学び合う学会があってもいいのではないでしょか?

昨年末に、中部支部の設立の計画を検討しました。中部支部も、四国支部や
関西支部のように定期的に地域でも会合が開催されればと思います。
4月から始まる2017年度には、九州、中国、東北といった支部を設立していく
予定です。

事務局としても、身近で学ぶ機会が増えていくように努力いたします。
まだまだ、事務局として至らない点がり、会員の皆様には、十分な満足を
頂いていない点も多々あると思います。
新年から長文になりましたが、本年も、何卒、よろしくお願い致します。
                   

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