社員の強みの融合が、人を大切にする経営
人を大切にする経営学会の今週の巻頭言
社員の強みの融合が、人を大切にする経営
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清川メッキ工業株式会社
専務取締役 清川 卓二
みなさん、あけましておめでとうございます。
福井市でめっき専業研究型企業 清川メッキ工業の清川卓二と申します。
第五回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞を頂きました。
今回は、このような機会を頂きましたので、地方の中小企業の実態について
お話させて頂きます。
地方の学生は、地元の事や、地元の企業を知らずに県外大学へ行ってしまいます。
そして、福井県の場合、県外大学へ進学した学生うち、80%が県外に就職
してしまいます。
これは、就職活動時、都会企業情報はあふれていますが、地元企業の事は、
知らない、情報が少ないことで見劣りすると感じてしまうからではないでしょうか。
最近は、インターネットの就職専門サイトに登録していない企業は、就職活動
の選択にも入らない状態です。インターネットなどのメディアの情報が、
学生に取っては、すべてのように感じます。
さらに、仕事の意義を十分理解しないまま「就職活動」を実施し、仕事、
職業ではなく、会社選びとして実施している結果から県外就職の増加が
起こっていると感じられます。 結果的に、地元が手塩にかけて育てた優秀な
学生は、地元では活躍せず、都会、大手だけが益を得る形になっています。
これにより、地元中小零細企業の人材不足が加速していきます。まず、
継承するための人材が不足します。そして、理論化できる人材不足による
技術力の衰退です。中小企業に取って、職人的な技は必要です。しかし、
その技を継承し、高め、国際競争力を付けていくためには、理論化が不可欠です。
中小ものづくり企業でも、かつては、職人的な技を習得し、行動的な若者が
ほとんどでした。職人的な技を習得し、行動的な若者は、傾向的に理論化が苦手
です。長い時間を掛け、習得した技は、手の感触、音、見た目等の五感と経験
から裏付けされた感により、結果を出してきました。結果を出すために、
試しては、失敗し、試しては失敗する。失敗の連続のなかから、ヒントを見つけ、
成功に近づいていく。
理論的な考えではなく、行動により、経験の積み重ねが、成功の早道でした。
しかし、それを言葉にできても、理論化はなかなかできないものでした。
理論化できなければ、次の技術開発、異常が起こった時に対応に手間取り、
お客様に迷惑を掛けることになり、更には企業の存続自体の危機となります。
私の会社も創業して25年が経ったころ(1989年)、ようやく、大学卒の学生が
新入社員として採用できるようになってきました。学生の中には、理論化に
長けている者がいます。しかし、理論化に長けている大卒学生は、なかなか
行動に移せない、自分で試せない、試してみようとしない傾向でした。
行動を起こせない、試せないのは、失敗を恐れる心と経験の少なさからくる
現実とはかけ離れた、設計理論にあります。
そこで、私の会社では、行動派社員と理論派社員をペアーにして、仕事を
させることにしました。仕事の取っかかりは、行動派からです。行動派が、
経験から条件を出し、トライ アンド エラーで、結果をだします。その後、
理論派による検証をし、理論化を実施します。あくまで理論化は後付です。
その理論を実験により検証し、理論の精度を高めていきます。
理論化ができれば、ノウハウとなり、新技術への展開が図れます。いわゆる
イノベーションを起こすキッカケとなるのです。 行動派だけでは、これまでの
「めっきが剥がれる」といわれる産業から抜け出すことはできないと思います。
理論派だけでは、「めっきは、高等で高価な技術」となってしまいます。
行動派と理論派の長所の融合により、めっきは、「最先端で、多くの人の役に
立つ技術」となりました。
中小零細企業が地域で、このバランスの取れた人材確保、人材育成をして
行かなければ、日本の産業が衰退していきます。
中小零細企業の衰弱は、地域の衰退につながります。
中小零細企業の力がなければ、日本のものづくりや創造産業ができなくなり、
大手企業と日本の将来もなくなります。
人を大切にする経営とは、理念を持った社員教育、地域共育にあります。社員
一人一人と向合い、社員の強みを引き出し、地域と共に子ども達を育てていく経営が、
「人を大切にする経営」の一つであり、日本を支えていくものと思います。
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