「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を頂いて 萩原工業

【人を大切にする経営学会】メールマガジン 第172号より

「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を頂いて

萩原工業株式会社
代表取締役会長 萩原 邦章

この度は栄誉ある第8回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の経済産業
大臣賞を頂き。誠に光栄で身の引き締まる思いであります。
3月16日に法政大学での表彰式、受賞記念スピーチ、そして交流懇談会と
一連の行事が終わりホッとしているところです。

受賞スピーチでもお話ししましたが、当社の創業者である父を早くに亡くし
31歳というイレギュラーな歳で企業のトップに就いた小生でありました。
我武者羅に事業業績を一番に置き、また若気の至りで創業者を超えたい周囲
から立派に思われたい、そんな稚拙な新米社長業でスタートしていました。

そんな折、社長になって5年目の年に社員を労災事故で亡くしてしまい、
丸で頬を殴られた思いでした。
この辛い経験をきっかけに、幾ら頑張っても創業者の偉業を超えることなんか
は出来やしない、そして自分には地位も名誉も要らない、自分が捨て石に
なって社員とその家族の幸せを一番に置いて経営をしていこうと自覚しました。
それ以降で私の本当の社長業が始まったのでした。

私には3人の人生の師がいます。
一人は父の二代目萩原賦一です、もう一人は父の下で番頭格を務めた岡本文治
です。そしてもう一人は倉敷の地が生んだ偉人大原孫三郎です。

父からは事業に対する熱い情熱と失敗を恐れない開発マインドを、岡本さん
からは冷静で知的なマネジメントと常なるイノベーションの必要性を、そして
大原孫三郎氏からは企業を通じての社会奉仕の思想を学びました。

大原孫三郎は、大原美術館、倉敷中央病院、大原農業試験場、そして法政大学
にある大原社会問題研究所という、数々の社会奉仕の業績を残しています。
無論にそれ以外にも多くの人々と出会い、その出会いの中で生かされ磨かれてきました。
一昨年に社長を後任の浅野一志君に継承しましたが、社員の幸せなくして企業
の発展がない事はしっかりと受け継いで呉れています。

今回の有難い受賞は、決して慢心することなく初心に戻り、人を大切にする
経営に邁進するようにとの天の声と思っています。

今回の大賞を頂けることになり振り返ってみて、特に大事にしてきたことが
ありますのでご案内したいと思います。
それはありきたりな社員とのコミュニケーションですが、その事を努力するのに
30年近く続けてきたことがあります。
それは社長室に社員に関するメモが入った全社員の顔写真を掲示したことと、
社員の誕生日にはメッセージカードを添えたバームクーヘンを贈ってきました。

当社も本社で400名を超える辺りから社員の名前と顔が定かで無くなってきました。
毎日一人ひとりに会える訳ではありませんし、声を掛けれる訳でもありません。
それで作ったのが社員証を社長室に掲示していつでも私のそばに社員の存在を
認識し、感謝の気持ちで接しようとしたことです。
その社員証には備考の欄を設け、その社員の慶弔事項や社内での大事なエポック
などを書き込んでいきました。そうすることで社員の一人ひとりとの距離を、
先ずは社長の私から近付けていきました。

そうして社員一人ひとりの誕生日に、その社員の顔写真のメモを見ながら
メッセージカードにその人をクローズアップする出来事を書き込み、私と社員
との心の糸電話を作っていきました。
「あっ、社長は自分のこんな事を覚えてるんだ。自分の努力のこんな事を知ってる
んだ。」そんな心の糸電話を通じてホットライン・直通コミュニケーションを
続けてきました、これは正に一隅を照らすことで社員の遣り甲斐、働き甲斐を
醸成してきました。

これはバームクーヘンを食べる時にその箱の上にあるメッセージカードを見て
「お父さんはこんな事で苦労してるんだ、こんな事で頑張ってるんだ。」と
ご家族も同時に読んでご理解して、お父さんへの感謝の気持ちを持って頂けます。
毎月50枚の誕生日メッセージカードは大変でしたが、日々のこんな努力が
今回の大賞受賞の礎になっているのかなと感慨深く思っているところです。

本当に大変な栄誉を頂き、重ねて御礼を申し上げます。
これからも経営道の修行の道は続きます、慢心することなく社員を大事にする
ことをモットーとして、そして地域社会に貢献する企業経営を続けていきたいと
思います。今回は本当にありがとうございました。

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