徳武産業株式会社【No13いい会社視察2012/9/3】
今回は2012年3月の「第2回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」にて審査委員会特別賞を受賞された『徳武産業株式会社』さんをご紹介致します。
2012年9月に坂本ゼミ夏季合宿先のひとつとして訪問し、十河孝男社長(現;会長)にお話を伺いました。
https://www.tokutake.co.jp/
*本文章の内容は6年前の視察情報に基づいています。現在では最新情報と相違があるかと思います。その点ご承知おきください。
徳武産業さんは徳武重利氏によって昭和32年香川県さぬき市において手袋メーカーとして創業されました。香川県は国内手袋生産シェアトップでした。しかし手袋は季節商品であったため創業後5年ほどして、おとなり徳島県のスリッパ縫製技術を取り入れ、スリッパ作りに転換します。(徳島県はスリッパ生産では国内シェアトップでした)
しばらくして、大手子供用運動靴メーカーの下請け工場になることができ、運動靴のアッパー部分を製造開始。ピーク時10万足/月を生産するようになります。厳しい品質・コスト・納期の経験が同社を育ててくれたと言い、十河孝男社長は感謝の気持ちを語られました。
・会社も少しずつ大きくなり、後継ぎを計画していなかった徳武重利氏は、長女の夫であった十河氏に後継社長を熱心に依頼。
・十河社長は当時一般企業に勤めており結婚後10数年経っていましたが先代の意を受け徳武産業に入社。
・徳武重利氏はまだ59歳の若さだったためにすぐには社長になるつもりはありませんでしたが、入社すぐに重利氏が病気で倒れ入院後たった数日のうちに亡くなってしまい十河氏が社長就任。
・社長就任後、義母や当時15名ほどの社員との関係はぎくしゃくししばらく苦難の時期を過ごす。
<印象的だった十河社長の話>
・先代から引き継いだ時の売上金額は、一億円の大台の少し手前だったために、すぐ大台を超えると思っていたところ、なかなか超えられませんでした。その話を先代の法事で住職さんにしたところ、“先代と張り合って超えることを目指すのではなく、社長を任せてくれた先代に感謝することが必要”と言われ、涙が止まらなかったと言います。その日から十河社長の心に変化があり、社長就任後うまくいっていない義母や社員との関係も不思議とうまくいき始めたということでした。
<下請け脱却とあゆみシューズの誕生>
・先述の運動靴メーカーのブランドを支える存在として約20年間取引をするも、そのメーカーの海外進出が具体化し、数年以内に受注はなくなることが想定される事態になりました。十河社長は当時売上比率80%でありながら、自らメーカーに下請け中止を申し出ます。
・新たな事業として、当時老人ホームを運営する知り合いから“ホーム内で転倒する老人がいる。床を変えても転倒する”という話を聞き、転ばないルームシューズの開発が始まります。
・十河社長は寝る間を惜しんで仕事に打ち込み、社長業をしながらも研究開発に注力。
・2年間で500人にヒアリングやモニタリングを実施。
・平成7年『あゆみシューズ』を発売開始。同社はその後介護シューズ業界トップへ。
・両足が別々なサイズの靴、片方だけほしい等、業界の非常識を実現。
・お客様の誕生日にはメッセージカードと記念品を送付。購入者の楽しみになっている。
・オーダーシステムによるシューズ作りを実現。年間1万件。累計10万足販売。経験の中から製品を定番化し利便性・低価格を追求。当初赤字続きでしたが一定量を超えたことで利益を生み出す事業に成長。
<社員教育>
ある得意先企業の対応を特定の社員に任せていたところ、売上が激減したことがあったと言います。その出来事を契機に、社員任せにして無関心だったことを改善し、“一人の社員も落伍者を出さない”ために社員一人一人と向き合うことを開始。今では、社員の満足がなければお客様の満足はないと考えています。
徳武産業さんにお客様から寄せられるアンケートやお礼のお手紙は、同社の歴史そのものです。製品に同封するアンケートはがきの返信は50~100件/日。その70%程はびっしりと書き込まれています。【3年寝たきりだった女性のお話】や【10年ぶりに履けた靴】などたくさんのあゆみシューズにまつわるお話の宝庫です。
最後に同社のホームページにもありますが、同社製品を使用した男性のご家族から届いた動画をご紹介させていただきます。
『ありがとうを伝えたくて』 動画(約6分30秒)
https://www.tokutake.co.jp/commitment/detail5.php#map
(再生後は音声が流れますのでボリュームにご注意ください)
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。少しでもお読みいただく皆さまのお役に立てれば嬉しい限りです。個人的な認識をもとにした投稿になりますが、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)
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