「生きる」とは「働く」こと、そして「幸せになる」こと
人財塾の坂本先生の授業では、情報提供として「人を大切にする経営」についての沢山の情報を共有頂く。毎回、心を揺さぶる素晴らしいお話しを聞いて、新たな気持ちで一生懸命に生きようと思う、とても大切な学びの時間だ。11月の授業では塾生の一人である菊川純平さん(株式会社ナリタヤ)が紹介してくれたとのことで「あるレジ打ちの女性のお話」が共有された。働くことの意味を教えてくれる素晴らしい話しだった。
後日調べたら、「涙の数だけ大きくなれる!」(木下晴弘氏著)という書籍に掲載されているエピソードの一つだとわかった。著者の木下氏は大学卒業後に銀行に就職したが、学生時代大手進学塾の講師経験で得た充実感が忘れられず銀行を退職して同塾の専任講師になった。同氏の多数の生徒は超難関校に合格したという。その後、株式会社アビリティトレーニングを設立し、現在は全国の教育機関で、教員・保護者・生徒向けのセミナーを実施している。(同社HPより抜粋)
この「あるレジ打ちの女性のお話」は、来年(平成31年度)の中学2年生の道徳教科書(出版社:株式会社学研教育みらい)に掲載されるらしい。アビリティトレーニング社のHPでも公開されている。下記にURLを紹介するので、是非一読して頂けたらと思う。
http://www.abtr.co.jp/namida.pdf
人財塾で学び始めたことを機に、私はグァテマラの先住民族女性の雇用と安定収入を確保するためのビジネスに関わっている。私の主な仕事は、先住民族女性が手仕事で織った民族衣装をアップサイクル(※)したスカートの店頭販売スタッフだ。それまで販売の経験はなく、不安で最初はあまり気が進まなかったのだが、まずは現場を知らなければと義務感で店頭に立っていた。慣れるにつれて、モノを売るというよりもお客様に似合う一着を真剣に探すこと、長く愛用してもらうためにモノづくりのストーリーとグァテマラ女性の思い伝えること、を念頭に販売するようになった。お客様から「久しぶりにお買い物をすることがとても楽しかったわ、ありがとう。」「あなたとのおしゃべりがとっても楽しかったわ。」との声を頂くことがある。今は販売を通じてお客様と共有する時間は宝物だと思うようになった。販売の仕事は立ちっぱなし、拘束時間は長い、土日出勤もあることから私自身が敬遠していたので、こんなに喜びがある素晴らしい仕事だということをどうやったら伝えられるのかと思っていた。そんな時に「あるレジ打ちの女性のお話」を共有頂いたのだ。
これをきっかけに「日本でいちばん大切にしたい会社1」(あさ出版)を読み返した。第一話(日本理化学工業)で語られる「幸福とは①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。この三つの幸福(②、③、④)は、働くことによって得られるのです。」との僧侶からの教え、そして大山社長の「人間にとって“生きる”とは必要とされて働き、それによって自分で稼いで自立することなんだ」との学び。これを読んだ時の衝撃はとても大きかった。それから3年を経た今、私は人財塾生として坂本先生に学んでいる。
数ある坂本先生の著書の中でも、私が特に心の励みにしている文章をもう一つ紹介したい。以下は、「どう働く」(あさ出版)で坂本先生がご自身の経験を綴った箇所からの抜粋である。
私は大学で教える前は、公共機関に努める公務員だった。入職して最初に与えられたのが中小企業の現場を回って景況調査をする仕事だった。
調査が目的だから、「困っている会社が5件ありました」「困っていない会社が5件ありました」とデータを報告すればそれでよかった。
だが、私は目の前で血を流している人を見殺しにできなかった。どうにかしてこの人のためにできることはないかと、懸命に国の制度やいい会社を調べたり、アドバイスをしたりした。
当時、私には今のように人的ネットワークも知識もなかったから、彼らを助けるためには自分で勉強するしかなかった。
だから誰よりも早く起きて、誰よりも遅くまで仕事をし、勉強した。
私を支えたのは、人の役に立てる喜びだった。
当時の私のような若造に、私の親ぐらいの年配の経営者が「ありがとう」と顔をしわくちゃにして喜んでくれた。ときには涙を浮かべてお礼を言われることもあった。若い私にとって相手が喜ぶ顔を見ることがどれほど励みになったことか。
そのとき私が思ったのは、やりがいとは与えられるものではなく、自分で作るものだということだった。それも働くという行為を通して、人の役に立てることが、やりがいをつくるのである。
今年70歳を迎え、現在は人的ネットワークも知識も膨大な坂本先生であるが、「目の前の人を助けたい」との熱い思い、そのために骨身を惜しまず努力する姿勢にはゆるぎがない。いつも、私たちに「社会的に弱い立場にいる人々に降りかかる火の粉を振り払い、私たちが彼らを守らなくてはならない」と語る。坂本先生の「人を大切にする経営」を一人でも多くの人々に伝えるべく、人財塾での学びを深めていくと決意を新たにした。
人を大切にする経営学会 人財塾 松久 知美
※アップサイクル:循環型社会におけるものづくりの新たな方法のひとつ。従来から行なわれてきたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化や再利用ではなく、元の製品よりも質や付加価値の高いモノを生み出すことを目的とする。
コメントを残す