水上印刷株式会社【No82いい会社視察 2012/11/12】
今回は2012年11月に視察させていただいた水上印刷さんをご紹介致します。
同社は坂本先生と研究室に所属す有志メンバーで取り組んだ出版プロジェクト「なぜこの会社に人財が集まるのか?(商業界)」の一環として視察致しました。
当時は私自身がデジタル印刷に関わる仕事をしていましたので、水上社長取材の際は、逆質問を受け企業秘密に近い会話をした懐かしい思い出があり、今も新宿にあった同社の会議室の情景を思い出すことがあります。
●概要 https://www.mic-p.com/ (現在のホームページから抜粋)
創業 1946年7月1日
資本金 1,000万円
代表者 代表取締役会長 水上 光啓(2014年に会長へ)
代表取締役社長 河合 克也
事業内容 総合グラフィックス
本社 東京都新宿区西新宿5-14-3
2012年頃の印刷業界は、デジタル化やネット化によって従来の印刷会社の淘汰がかなり進み、市場は縮小傾向にあると同時に、ネット印刷系のサービスが拡大している時期でした。
従来の業界では、御用聞き的な営業スタイルや下請け・孫請けスタイルの構造の中、新しい印刷機器を導入した数年間だけ利益を確保しやすい、そんな状態だったように思います。そしてこの頃から時代の変化は大きくなっていきます。
水上印刷は何といっても“採用と教育”に秀でていて、事業をワンストップサービスやプリントマネジメント、ソリューション化することで同社独自の歩みを進めていました。その結果、印刷会社とは言えない印刷会社になっていきました。
●採用
水上印刷さんは新卒採用にこだわっています。
当時の会社説明会会場は座席220、飾りつけなどは社員の手作りです。ドーナツ&ドリンクセットも手配します。学生もお客様と考え一期一会の意識で社員一同ホスピタリティをもって対応します。
採用活動は同社にとってお祭りだと言います。
内定までには平均10回のステップがあります。仲間探しのミスマッチを避けるために多様な内容だけではなく回数を増やすことも重視しています。
<主な採用の流れ(抜粋)>
エントリーシートは手書きがルール
グループ討議
職場適性テスト
交流会(飲み会)
シュミレーションゲーム実施
面接
同社は“相思相愛で入社したい人・してほしい人”を見極めて、風土を共有した高次元な採用をしていました。
ちなみに視察に伺った2012年、エントリーは約1100名、採用は数名の狭き門でした。
●同社を支える教育制度
人づくりを目指す同社の社員教育は圧巻ともいえる内容です。よりよい風土を作るために必要だと考えています。
社員教育は多様な内容で徹底的に実施され、全社的には年間200回以上実施されています。
キャリアパスやPDCAを含めた仕組みになっていますので、同社の根底を支える制度となっています。
わかりやすい実績としてDTPエキスパートは60%の社員が取得しているという驚異的な状況でした。
●水上社長のお話から
・60才を越えて色々なものが見えてきたと言い、人財を一目見た直感は結構当たる。
仕事できる・できない、情熱ある・ない、結論出せる判断力があるか・ないか(なかなかいない)がわかる。
・社長の仕事として
① 会社の方向性を明確にする
② 経営者として情熱を持つ
③ 新しいビジネスモデルを作り上げる社員をつくる
・今までの印刷業は製造業で、“情報”を伝えていたが、これからは感動価値を創造することが大切。そのためには感性が高く、提案力のある社員を育てていくことが大切だと力説されました。
●最後に
2009年のデータでは印刷業界68,000社のうち約80%の企業が赤字と言われていました。しかし水上印刷は8.9%の経常利益です。当時の平均年齢は29.8才。
“生き残る ではなく 勝ち残る”というお話から、同社の社員教育の仕組みは、単なる教育の域を超えて、企業の存在価値を根底から支えて高める仕組みなのだとわかりました。
改めて同社の2012年度と2018年度の売上推移をみたところ倍以上となっていましたので、人財力を高めた結果として業績が後からついていくる同社の姿は、もっと世の中に知られるべきだと感じました。
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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