株式会社アポロガス【No89いい会社視察2017/9/4】
今回は2017年9月に坂本ゼミの東北合宿先としてご訪問した『株式会社アポロガス』さんをご紹介致します。
同社は“元気エネルギー供給会社”。福島に生まれ育った企業として地域と密接につながる恩返し会社です。
●概要 http://www.apollogas.co.jp/ (現在のHPに視察時の情報を加筆)
所在地 福島県福島市飯坂町字八景6-17
創業 1971年(昭和46年)7月
資本金 20,000,000円
代表取締役社長 相良 元章
*篠木雄司社長は2019年5月21日付けで取締役会長に就任されています。
社員数 40名(グループ70名)
年商 約20億円(視察時ヒアリングから)
受賞歴
2017年3月の第7回日本でいちばん大切にしたい会社大賞では審査委員会特別賞を受賞。
経済産業省が選ぶ「おもてなし経営企業」
中小企業庁が選ぶ「がんばる中小企業300社」
●“元気エネルギー供給会社”に育てた篠木雄司現会長
篠木雄司氏は地元の銀行に勤務後、父である篠木勝司氏が中心になって設立したアポロガスに30才で入社。2008年45才のときに社長就任されました。
大学時代にパイロットの免許を取得するために留学先したアメリカで体調を崩した際に偶然出会った牧師さんに親切にしてもらった経験から、この恩を返せる人間になろうと心に決めたそうです。
●採用方針
特に東日本大震災のあとに新卒採用を積極化していますが、その方針は明確です。
“人の生きる目的は回りの人を幸せにすること”という価値観を共感できる人です。
以前アインシュタインが来日したとき、ある学生の“人は何のために生きているのですか?”という質問にアインシュタインが答えた内容です。同社では頭の良い優秀な人財であっても自分中心の人は採用しないのです。
●ユニークな新人研修
同社の資料には50日間、150研修、100本の論文とありますので、単純計算で一日当たり3研修・2論文(報告書)のボリュームは想像を超えた充実の研修です。
多種多様な研修内容に関しては、採用に望む学生の覚悟を確認の上、採用活動にはいります。半数以上の学生は敬遠するそうですから、熱意や理念共感度は日本中見渡してもトップレベルではないでしょうか。
150本の研修名一覧が手元にあります。変わったものや驚きのタイトルも多くみられます。しかし、 “個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定される”とし、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方に基づいて考え抜かれた内定段階からの新人研修なのです。(「計画的偶然性理論」スタンフォード大学 ジョン・D.クランボルツ教授が提唱したキャリア理論)。
学生が多くのインプットの中で予期せぬ状況に戸惑いながらも同期や先輩社員、地域の人達に繋がりながら自己を見つめ直し社会人の第一歩としてスタートするにはこれ以上ないほどユニークで100%フルパワーをそそがなければならない本気の研修だと感じました。研修事業としても成り立つのではないかと感じました。
●40年前の恩返し
拝啓 四十年前の駆け出し記者様へ、という書き出しで始まる同社の全面新聞広告があります。2011年7月1日付けで福島民報の新聞に掲載されました。
この全面広告のちょうど40年前、小さなLPガス販売会社4社が合併協業してアポロガスの前身が設立された日です。設立時の熱い想いを聞いたある新聞記者が、“設立当初はお金がかかるから”と同社を応援する記事を無償で書いてくれたと言います。“ずっ~と先に会社が大きくなって余裕ができたら新聞に大きく全面広告でも出してもらえればいいから”
その約束は40年の節目に果たされたのでした。
ちょうど東日本大震災の影響が色濃く、福島の町は原子力発電所の大事故に翻弄されていた時期です。そんな中、同社の篠木社長(当時)は40年前の恩返しとして、“元気エネルギーを供給し続けることを宣言する”広告を掲載したのでした。まさに恩を大切にする同社の姿でした。
そして当時記事を書いた新聞記者は40年後に同社の社長になっていたということです。
●最後に
福島県は東日本大震災によってもっとも翻弄され続けている地域だからこそ、元気を発信し続ける同社の姿に感銘を受けるものが多くあります。そして理念共有型の採用や人財育成の質と量は多くの企業に参考となるものです。同社社員の一人一人の力は計り知れないと感じました。
篠木社長(当時)の“社員は社内では育てられない。社員は地域で育てられる。育ててもらっている”というお話が印象的でした。
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)
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