統合失調症のKさんがわが社にやって来た。
育児休業から復帰し、頑張って働いてくれていた女性社員が、あっという間に第2子の出産となり、しばらくは子育てに専念するということになりました。そのため小さなわが社のオフィスの机が今年から一つぽつんと空いています。
収益的に余裕があるわけでは決してありませんが、天命として「企業における障がい者雇用の普及」を世に問うている立場として、今年は当事者の方をなんとしても受け入れたいと考えていました。
以前、知的障がいの方の就労支援をさせていただいたときにご縁があった支援団体に連絡を入れ、当社で「精神障がい者」の方に職場実習していただける状態にあるので、候補者がいるようでしたら紹介してほしいと依頼しました。
先方でも、精神障がい者の受け入れ先がないか模索しているところで、今、まさに当社へ打診してみようと思っていた矢先だったそうです。精神障がい者を事務職で受け入れる企業がほとんどなく、困っているとのことでした。
渡りに船とばかり、すぐに某就労支援センターで就職準備のトレーニングをしているというKさんを紹介したいとの連絡がありました。
病名をお聞きすると、数年前に統合失調症と診断され、精神保健手帳2級の手帳が交付されているとのことでした。
具体的な病名をお聞きすると、本当に当社で大丈夫かなと一瞬不安が頭をよぎりましたが、これまで富士ソフト企画さんの取り組みをこの目でしかと見てきましたし、お世話になっている同社の遠田千穂さんの「精神障がい者は人財の宝庫」という言葉が蘇ってきました。
すぐに絶対大丈夫だと思い直し、社員のみんなに「今回、精神障害のある方と就労してみたいのだが」と打診したら、「わかりました」ということで、事はすんなりと進みました。
実は、ここが重要なのです。
健常者の社員が、障がい者と働くことの意味を感じて、職場に迎え入れる気になっているかどうかがとても大切なのです。
このことは今回も改めて感じたところです。
さて、22日、緊張した面持ちでKさんがわが社にやって来ました。
まだ就労時間前だというのに、早くも仕事に入ろうと、今回担当になった社員Yに指示を求めていました。
初日から現在まで、高い集中力でパソコン作業を快調にこなしてくれています。
きちんと挨拶もできるし、コミュニケーションもまったく問題がありません。
時折見せる笑顔がとてもチャーミングで、相手をほっとさせる才能があるなと感じました。
なぜ、これまで就労できなかったのか大いに疑問をもちました。
やはり社会の無知、偏見が雇用前の職場実習の機会も奪い、結果として就労が進んでいないということなのでしょう。
担当している社員Yはその日の業務日誌で「Kさん、とってもいい子ですね。文句なしです。」と初日から気に入った様子です。
実際、Kさんが来てくれたおかげて、なんともいえない優しい空気感が早くも職場に立ち込めてきた感があります。
そして、先週予定していた職業訓練(3日連続 10時-16時)が終了し、本人いわく「毎日があっという間に過ぎていきます。」とのこと。
高い集中力があることに加え、わからないこと、できないことをはっきりと伝えてくれて、確認しながら仕事をしようとする意識があるので、こちらもとても対応がしやすく、あまり本人に負担をかけずにできているかなというところです。
わずか3日間ですが、統合失調症のKさんが得手、不得手なことはこういうことかとかなり理解が進みました。
「ありがとうございます」がとてもうまく言える方なので、周りの社員との関係性がどんどん良くなってきています。
これから先がますます楽しみになってきました。
小林秀司
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