永訣

野口具秋です。

若いころから、小説は大好きでしたが、
詩は好きではありません。
唯一、宮澤賢治の「永訣の朝 」
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」
死にゆく日、最愛の兄に、雪を頼んだ僅か20の妹とし子。
幼いころから使ってきた茶碗に
「みぞれ雪」を取ってきます。
中1のころ国語の松尾先生に学びました。
NHK第2放送で何度も朗読を聞きました。

発症から18年間、病魔に苦しんだ義弟が
家族に看取られ、静かに旅立ちました。
66歳を迎えたばかりでした。
独りで苦しんでいるとき、立ち寄ると、
自前の手料理が並べられ、
スーと部屋から消えてしまう男でした。
大家族で箱根のバーベキューの時には発症していました。
ビール片手に少しは話すようになっていました。
元気な最後は1年前の甥の結婚式。
車いすを押しました。一言もしゃべりませんでした。
ニコニコ微笑んでいただけです。

友人から携帯に電話が入りました。
頑なに携帯を拒否する大学時代の親友です。
クラブの同友が「死の床」に在るという内容でした。
義弟の野辺の送りを前にして枕元に急ぎます。
枕元に1年前の同期会の写真がありました。
痩せた手で私の手を固く握り、
涙を流し決して放そうとしません。
「来年も西新宿の横丁で2次会やろうな!」
「夜が怖いよ!こわいよ!」。「まだ早い、追い返せ!」
これが精一杯でした。
(9月4日昼過ぎ、この世を去って行きました。1週間後でした。)

大きな邸宅を思わせる「S送賓館」は、
まったく葬儀場を想像させる雰囲気はありません。
瀟洒なプチホテルです。
闘病の末、4kgになってしまったが、
たくさんのたくさんの花に埋もれ、
大好きだったお菓子、シュークリーム、
おまんじゅうが枕元に沢山。
参画したウルトラマンのキャラクターに見守られています。
2人の孫にも出会うことができました。
いい旅立ちを心から願います。

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