社員が自主的に働くようになるための3つのポイント
社員に自主的に働いて欲しいという経営者が多い。しかし、どうしても社員は、言われたことだけをやり、受け身になりがちだ。ではどうすれば社員が自主的に働くようになるのだろうか。
私は建設業専門のコンサルタントとして、これまで20万人、4000社のコンサルティングを行ってきた。その中で、以下の3つのポイントが重要であると思っている。
- 会社に言いたいことが言える雰囲気がある
- 会社が自分を大切にしてくれているという実感がある
- 会社は自分のものだという当事者意識がある
以下、この3つについて具体的な事例をもとに考えてみよう。
1. 会社に言いたいことが言える環境がある
社員は、会社や上司に対して言いたいことを言いたいと思っている。しかし上司に話をしようとしても、聞いてくれなかったり、すぐに反論されたりするとそのうち、何も言わなくなってしまう。
先日A建設株式会社を訪問したときのこと、5年前に比べて社員の表情が明るくなっていたことに気づいた。社員に聞くと
「5年前に就任した新社長が頻繁に話を聞いてくれるのです。現場に来てくれたり、一緒に車で移動するとき、「何か困ったことはないか」と聞いてくれます。そしてその際、改善して欲しいことを伝えると、上司に伝えてくれ、すぐに改善してくれるのです。」とのこと。
その結果、中途退社する社員がほとんどなくなり、現場で主体的に工事運営をしてくれるようになった。
つまり、「言いたいことを言える環境」があると、自主的に働くようになるのだ。
2. 会社が自分を大切にしてくれているという実感がある
社員が自分を大切にしれくれているという実感を得るためには以下の施策が必要だ。
残業を減らし、休日を増やすために、余裕のある人員配置をしたり、業務の効率化ができるようICT投資を進める-などだ。
B建設株式会社では、改善提案制度がある。しかしこれまではあまり機能していなかった。そこで社長がすべての提案をまずは聞き、そのほとんどを採用することにした。例えば手当を増額して欲しい、時差出勤を認めて欲しいなどである。それから1年経ち、提案内容が変わってきた。それまでは自らの待遇の改善提案がほとんどだったのだが、会社の売り上げや利益向上につながるような提案に変わってきたのだ。
「会社が自分を大切にしてくれているという実感」を持つことで、社員は会社のためにがんばろうという気持ちになり、自主的に働くようになるものだ。
3. 会社は自分のものだという当事者意識がある
ここでいう当事者意識とは、経営者意識ともいう。社員全員が危機感を持って仕事をしている状態である。
そのためには経営状況を開示し、透明化することが欠かせない。その人それぞれの責任の範囲の情報を開示することで、自ら考え、行動して、結果を出すことができる。
さらに経営者は経営理念を明確にし、経営理念からずれていない限りは、社員に自由に仕事をさせるとよい。
C建設株式会社の出来事だ。普段雪の降らない地だが、朝起きると雪が降っていた。すると、社員が自主的にいつもより1時間早く出勤し、まず会社の周囲の雪かきをし、その後現場に行き、職人がすぐに仕事ができるよう除雪をしたのだ。
一方、D建設株式会社では朝から事務所にて社員からの電話がなった。「雪で運転が危ないので出社が遅れます」と。
この両者の違いは、経営理念の違いだ。C建設株式会社の経営理念は「社員満足度、協力会社満足度、顧客満足度を高めよう」である。それに対してD建設株式会社の経営理念は「安全はすべてに優先する」であった。C社は、社員や協力会社が困らないように早く出社して雪かきをしたし、D社は自分自身の安全を最優先してゆっくり出社した。つまり両社の社員は経営理念に沿って行動しているのだ。
経営理念が経営者の思いを表している内容にすることで、社員は自主的に会社の目指すべき方向に向かって行動するものだ。
経営者が社員に対して「自主的に仕事をしろ」という前に、上記3つのポイントが満たされているかを確認すべきであろう。
人を大切にする経営人財塾一期生/ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役
降籏 達生(ふるはた たつお)
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