「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の狭間で
本来であれば、「オリンピックに備えて」テレワークをしなければならない時期になりました。しかし新型コロナウイルス感染症の影響により、一足先に、しかも急速にテレワークが実施されています。テレワークに合わせて、「ジョブ型」の働き方が注目されています。
業務内容を特定し、「時間」ではなく「成果」で評価する、「日中は子どもの面倒を見なければならず、集中できないから、夜に集中して仕事をしてしまおう」、「自分は朝型だから午前4時から起きて仕事して日中は寝ていよう」というように融通を付ける働き方ができるのがテレワークのメリットと言われています。
しかし現在、日本の労基制度は、1日8時間労働、週40時間労働、早朝夜勤は割増し、という制度になっています。自由な働き方をするためには、法的には裁量労働制をとらなければなりませんが、裁量労働制は適用が制限されています。
また「ジョブ型」であれば、自ら表明した業務を十分にこなすだけの実力がなければ、欧米では解雇されます。しかし現在の日本の法制度・裁判例の下では、単に能力不足のみをもって解雇することは極めて難しいと思われます。
したがって「ジョブ型」を採用しても、これら現在の法規制と調整できるような運用をしなければなりません。
日経新聞によれば、経団連の新田氏は、(これからの日本の企業においては、メンバーシップ型を取り込んだ)「日本型“ウェットなジョブ型”を模索すべきだ」と主張しているそうです。
しかし、個人の権利意識の高い欧米と異なり、日本人は勤勉です。
「1週間でAという仕事を完成させればよい」という課題があるとき、欧米人は、Aという仕事さえすれば他の時間はどのように過ごしてもよいと考えるのではないでしょうか。一方で、日本人は、Aという仕事が2日で終わってしまったら、あと3日別の仕事をしようとするように思います。勤勉な日本人にとって、1日8時間というルールがある以上、それよりも時短での仕事で割り切ることは難しいのではないかと思うのです。
また何もスキルのない新人に「ジョブ型」はあり得ません。社員教育を経て、またオンザジョブトレーニングを経てやっと一定のスキルが身につくと思います。「ジョブ型」で働けるのはその後のことです。
とするならば、日本型の働き方は、ジョブ型を中心にすえたウェットなジョブ型ではなく、メンバーシップを中心にすえた「ちょっとドライなメンバーシップ」あたりが妥当なのではないでしょうか。
(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)
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