粘り腰で道をひらく
新型コロナウィルスの全世界的な感染拡大で、世界の観光産業が大きな痛手を負っている。UNWTO(世界観光機関)は、その機関紙“World Tourism Barometer” 2020年5月号で、今後の移動制限の状況により、今年の旅行者の人数は、昨年比で58%から78%減少し、1億人ないし1.2億人の観光関連産業の雇用が失われる可能性がある、というケースシナリオを示している。日本でも、多くの旅館、レストランが窮地に立たされていることが連日報道されているが、先の見えない状況が長く続くなかで、強い気持ちを維持し続けることは難しい。
ずいぶん前になるが、「シャクルトン隊の南極探検の生き残りの軌跡から学ぶリーダーシップレッスン」という副題がつくDennis N.T. Perkins著 の“Leading at the Edge (極限のリーダーシップ)”という本を読んだ。南極大陸横断に向かった27人が、氷に閉ざされた海で船を失ったが、全員が無事に生還したという647日の事実をもとにシャクルトンとチームのリーダーシップをまとめた書籍には、とても説得力があった。
その中に“Tenacious Creativity(粘り強い想像力)”というキーワードがあり、そのあと、こう続く。“There is always another move.(必ず次の展開がある)”。逆境にあって想像力を眠らせるな、必ず次の展開がある、というメッセージである。この言葉は、私の記憶に深く残り、思い通りことが運ばないときに自分に対して唱える言葉になっている。
いま私たちに「新しい生活様式」を迫る新型コロナウィルスは、近いうちに「2020年に世界で猛威を振るったあのコロナウィルス」として記憶されることになる。だが、その先には以前と同じ経営環境があるわけではない。顧客が変わり、社会が変わり、国際関係が変わる。様々な「新しい展開」を見据えて、粘り腰の想像力で道をひらく経営を行っていかねばならない。
人財塾1期生 野村国康
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