新型コロナの紛争に備えて

令和3年5月3日、憲法記念日に大谷直人最高裁判所長官が会見を行い、そこで大谷長官は2つのことを述べました。

 1つめは、夫婦別姓問題や同性婚などの問題と思われますが「家族の在り方の多様化などに伴い、解決困難な家族事件が増えているが、現在の事態が家族を巡る状況に与える影響についても十分、留意する必要がある」と述べたことです。

夫婦別姓の問題やLGBTの問題は非常にデリケートな問題であり、職場においてもセクシャルハラスメントの対象となる問題です。職場内で夫婦別姓やLGBTに対してどのように対応するかが問われる時代になってきています。会社においても、今後、紛争にならないようにするために、このような問題を根拠に差別的な取扱いをすることがないように慎重に対応することが求められています。

2つめは、新型コロナに関連しての発言でした。新型コロナウイルスにより「国人生活は多くの影響を受けており、そのようななかで生じている葛藤が今後、法的紛争として現れてくる可能性もあると思われます」との発言です。

職場においては、休業に伴う賃金の問題、特に濃厚接触者に対する出勤停止などの取扱い、社会においては自粛により規制の在り方、今回問題とされているまん延防止重点措置による店舗への対応が平等の原則、営業の自由の観点から問題がなかったかなど、現時点においても既に紛争が生じてもおかしくない事態となっています。

政策の問題はともかくとして、職場における問題は経営者の対応一つで未然に防止できます。一方的な不利益を社員や社外社員に与えない、何らかの不利益を与えてしまう場合にも合理的な説明がつく対応をしているか、きちんとコミュニケーションをとりお互いに納得の上で対応しているか、という点が重要だと思います。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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