「春を前に思う」

2月初め、仕事で近くに行ったついでに以前の職場に立ち寄った。

採用試験の最中だった。今年も2人の採用に各地から180人余りが応募してくれたとのこと。70人ほどの職場で定着も良いので例年1人か2人の募集だが、200人前後の方が応募してくれる。その中から50人ほどに試験を受けてもらい、20人前後の方を面接し、採用していた。応募してくれる人は、大半が転職希望者で何割かは新卒の人もいた。新卒の人は、数多くの企業を受験し、未だ職が決まらない人たちだ。

ある年の面接の際、私は男性受験者に「今までの就職活動はいかがでしたか?」と尋ねた。

すると「数十社応募して不採用となりました。書類選考で落とされて面接にもたどり着けないこともあり、人格を否定されたように思い落ち込むこともあります。今回試験を受けることができ面接もしていただいてよかったです。」と答えてくれた。いわゆる一流私大の大学生で試験結果もよく、受け答えもしっかりしているが、少しおっとりした話しぶりが物足りなく感じる、そんな青年だった。

面接担当の合議の結果、別の数人が採用された。

 それでも、彼のことが気になった。私たちが毎年行っている採用活動で、傷つく人がいる。そのことを改めて教えてくれた彼は、更に傷を深くしているのだろうかと。

失礼を承知で、彼と連絡を取り関連職場の面接を受けてもらった。

 今でも話しぶりは変わらないが、真面目で頼りになる職員として働いている。あの時私の職場で採用されてもきっと力を発揮してくれただろう。彼以外にも、不採用となった人の多くはチャンスさえあれば活躍できたはずだと思う。

 今年も、2人の喜びと引き換えに多くの人が失望し傷を抱えることになる。誰でも就職できた時代に、なんとか職を手にした者としては、申し訳ない気さえしてくる。

 深刻な人手不足の一方で、有意な社会の人財を眠らせているとすれば実に罪深いことだ。

  人を大切にする経営ネットワークによる課題解決ができないだろうかと思う。

 人財塾4期生 ブレイスFP社会保険労務士事務所 北村 博昭

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