業務委託先の社員と委託元の労使関係
2022年3月30日、日経新聞に、「代理店従業員と中労委で和解 労働条件協議へ」という記事が出ました。
この会社は、全国規模で冠婚葬祭業を行っている会社であり、全国の代理店と業務委託契約を結んで、事業を展開しています。本社と代理店との間には、資本関係もなく、また代理店の社員と本社とは雇用関係もありません。このような社員が組合を結成し、不当労働行為で、本社を相手に地方労働委員会に救済申し立てをし、今回、中央労働委員会で和解をしたとのことです。
資本関係もなく、雇用契約もない本社が労働組合法上の「使用者」となるのかが問われている事案でした。
労働組合法では、「使用者」は次のように言われています。
「使用者」とは、労働契約の当事者として狭く理解されるべきでなく、労働者の労働関係上の諸利益に影響ないし支配力を及ぼしうる地位にある一切の者、と言われています。
つまり、資本関係もなく、雇用関係にもない場合でも使用者として認められる場合があるということになります。
これまでの判例等では、請負契約を締結していた会社から派遣社員を受け入れていた場合に、指揮命令をなし、終了条件を現実に決定している側が使用者となるというケース、親会社が使用者となるケースがありました。
今回のケースは、新聞記事等によれば、親子会社のような資本の関係もなく、また代理店から本社が派遣を受け入れているわけでもなく、単に代理店契約(業務委託契約)があるだけであり、ただ事実上、委託元のしばりが強く、その影響を代理店の社員が受けていたものと思われます。
とするならば、これまでの使用者の範囲が、若干広がったことになります。
最近は、飲食業界等で個人事業主との業務委託契約を締結するような業態が多くなってきました。そのような世相を反映した結果かもしれません。今後、このような形の紛争が増える可能性があります。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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