SNS時代のコンプライアンス
つい先日、社外におけるセクハラ発言により常務取締役を解任されたことがマスコミ等で盛んに報じられました。会社は、「人権、ジェンダーの問題の観点からも到底許容できるものではありません。」として謝罪をしました。
この発言は、社内での発言ではなく、その常務取締役が某大学の社会人セミナーの講師として行った発言でした。セミナー講師として、本人は自覚なく、単にウケを狙っての発言だったのでしょう。本人は、マーケティング戦略としては力のある方であり、そのためにセミナーの講師として呼ばれていたのだと思います。
たった一つの発言の結果、本人は常務取締役を解任させられました。一方で、もし会社がこのような厳しい態度をとらなかったとしたら、どうなるでしょうか?きっと、この会社はこのような発言をする人も会社に必要な人として擁護しているのだ、と評価されたり、場合によっては不買運動につながったりして、会社自体の信用を害してしまう恐れがありました。
会社としては、幹部役員や社員が会社外でどのような言動をしているか、全てを把握することもできませんし、管理をすることもできません。しかし、本人によるこのような発言が今回の問題となった時に初めてなされたのではないはずです。このような発言は、その人の本性からこぼれ出す発言です。厳しく言えば、その人の品性そのものとも言えます。社内でも多かれ少なかれ、同種の発言をしていたでしょう。周囲の人も、この人の発言や発想は「危ないなあ」と思ったことがあったはずです。それでも、社内で直接の被害がなければついつい見逃されがちになります。
今、危険なのは、社内での問題だけではないということです。社内であれば、このような発言が外部に漏れるといけないということで、内々に済まされてしまう可能性もあります。しかし外部では、他に拡散しないという力学は及びません。多くの人が、好き勝手に外部に拡散します。それが今回の事象だと思います。
見て見ぬふりをせず、流すことなく、気が付いたらその時にきちんと対応することこそ会社や他の社員を守ることにつながります。
なかなか難しいことで、私自身もできていないことも多く、また時には注意される側に周ってしまっていることもあるかもしれません。
自ら率先して「襟を正し」、気が付いた時点で適切な対応をすることの重要性を改めて考えさせられる出来事でした。
(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)
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